Mee Audio Pinnacle P1

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「硬い音」と「柔らかい音」

据え置きオーディオの世界でもそうですが、ポータブル・オーディオを長く聴いてくると、この問題に直面するようになってきました。突き詰めれば、要はいかに快適に上質な音を聴くのかということではあるのですが、この「音が硬い」という問題は、長時間リスニングする私にとって絶対に無視することのできない課題です。

Mee Audio社から2年程前にリリースされた、Pinnacle P1というコンシューマーIEM。これが同社のフラグシップ機のようです。正直全然知らなかったメーカーの一つなのですが、P1は亜鉛合金製の硬く冷たいハウジングが特徴的で、購入する以前より印象的なイヤホンでした。

ドライバー方式はDD一発なのですが、インピーダンスが50Ω(能率不明)と意外なほど高めに設定されており、どちらかといえば低出力のDAPやスマホからではなく、ポタアンのような出力の稼げる接続機器を想定されているかのような作りです。当然ですが、どのDAPに繋いだとしても、音量が稼げない代わりに、ホワイトノイズについてはほとんど感じられません。この点は最近Jazzをよく聴く私の好みと一致するところです。

装着感ですが、これが大変素晴らしく、私個人は全く耳に負担を感じないほど自然でピッタリ収まります。筐体が金属製なので、どちらかといえばその重さのほうが気になるところですが、着けていて重さを感じたことは一度もありません。とはいえこの点については、個人差があるかとは思いますが、優秀の一言です。

イヤーピースについては、私は付属品ではなくアコースティック・エフェクト製のものを組み合わせていますが、これが相性抜群。私の求める柔らかく且つ広い音場形成に、多大な貢献を果たしてくれています。聴くたびアコエフのイヤピの優秀さについては、もっと幅広く認知されてしかるべきだと感じてしまいます。

ケーブルについてはmmcxタイプが2種類付属。どちらも3.5mmタイプですが、一つはスマホ用のリモコン付き。銀メッキが施された銅製ケーブルですが、編み込み式の非常に柔らかい仕上がりになっており、取り回し並びに見た目も含め満足度は充分に高いと思います。

肝心の音質について。私も相当数のイヤホンを購入し聴いてきましたが、ここまで特徴があってその音作りに惚れこんだものは少ないです。音場が広く、音は中高域がトロけるように甘く繋がって聴こえてくるという、まさにリスニング向けに最適な柔らかいチューニング。響きも特徴的なもので、これは筐体が金属製ということも影響しているのかと思いますが、僅かに共鳴しているかのような感覚があり、それが何ともいえない独特の柔らかく丸みを帯びた空間、浮遊感を演出します。

この独特な空間表現については、IEM、イヤホンの領域を超えた生々しいもので、P-1にポタアンHA-2SEを組み合わせた時などに聴こえてくる音は、ちょっと今まであまり聴いたことのない類のものです。

低域はというと、特徴的な中高域と比べるとやや控え目で地味な表現です。但しボワつくというようなことは一切なく、必要量はしっかり出しており、DD一発ならではの全域の繋がり具合は感じられます。再生するジャンル(例えばRoots Rock Reggaeにおけるワン・ドロップや、Jazzのピアノ・トリオでのウッド・ベースの弦を弾く音等)によってはですが、聴いていてもう少しだけ粘ってほしいという瞬間もあるにはありますが、普通に聴く分には総じて充分な量感で不満とまではいきません。

それではハイレゾ音源を再生する場合はどうでしょう。柔らかいイコール上下方向に解像度的な弱点があるのではという気がしますが、けしてそうではありません。上などはサ行が刺さるそのギリギリ一歩手前まで聴こえてきますが、同時に奥のほうで鳴っているハイハットの音や、ブラシの擦れる音なども余韻は充分に豊かです。

192kHz/24bit音源などでは、解像度が高いだけでなく録音スタジオの空気感まで伝わってくるかのようです。

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Oscar Petersonのリクエスト名盤。1964年の作品とは思えぬ優秀な録音作品でもありますが、P-1との相性が絶品です。ピアノ・トリオの空間を生かした演奏、そしてその間を、奥行きを感じさせるP-1が充分に表現してくれます。定番"Days Of Wine & Roses"では御大のピアノは楽しく軽やかに。よく響くRay Brownのウッド・ベース、そしてドラムのストン!と抜けるようなキック音は、まるでその場にいるように気持ち良く聴くことができます。

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我が師匠の大名曲を含むベンスンの代表作。今更の一枚ですが、この作品のメロウさ加減はP-1の特徴とピッタリ一致。"Breezin'"は勿論最高ですが、聴いていてそれ以上に気持ちいいのは"Affirmation"。P-1では曲冒頭のアルペジオがゾクゾクするほどスリリング。リズム隊のHarvey Masonのドラミングはといえば、Fusionというものはこういうことだよとでも言わんばかりに、小気味良くそして抜群の浮遊感を持って舞い踊るように聴こえてきます。

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またしてもDiana!好きなのですねえもう。この作品はCostello色があまりにも濃厚な為、好き嫌いが別れているようですが、私も最初はとまどいました。今では好みの曲が見つかり始めてよく聴いている一枚ですが、意外やDianaではこれ等がP-1にぴったり合っていました。

Dianaのピアノについては、派手さがなくしっとりと弾いている印象ですが、P-1で聴けば艶やかで潤いも充分な、唄声同様に大変に魅力的な音色、演奏であることがよく分かります。"Abandoned Masquerade"や"I'll Never Be The Same"などは、(ジャケット同様に)鍵盤の上の指捌きが目に浮かぶような素晴らしい録音状態であり、聴く度ブリリアントだと呟いてしまいます。

但し"Sometimes I Just Freak Out"のような、比較的速い展開のアンサンブルについては、ホンのわずかながら苦手な印象です。これは上でも記述しましたが、中高域が柔らかくあまりに充実し切っているがゆえに、どうしてもスピード感が希薄に感じられるという点と、バスドラやウッド・ベースの沈み込み具合等が、もう一歩足りないということ等に起因したものだと分析しています。

逆にいえばP1には聴き疲れるという要素が一切ありませんので、得手不得手なジャンルをしっかりと見極めさえすれば良いということもいえます。P-1は聴けば聴くほど本当に個性的なIEMです。


※ ※ ※


ポータブル・オーディオの世界は底なし沼。よく言われる表現ですが、はい、実際そうだと思います。聴けば聴くほどに、これもっと良い音で聴くことはできないのかなと、常に頭のどこかで考えてしまっているのです。そしておそらく私が今聴いている音については、以前と比較すれば実際に相当進歩しているのかと思うのですが、それではこの先は?というと、まだまだやることも選定し組み合わせる機種についても、数限りなくあるのです。

楽しくも非常に恐ろしきポータブル・オーディオの世界。



視聴環境
・CAS-1- JRMC - pinnacle p1
・iPhone 4s - KaiserTone - ALO SXC Cryo 22awg Dock Cable - FiiO A5 -
pinnacle p1
・iPhone 5s - iaudiogate - oppo HA-2SE - pinnacle p1 etc.


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# by olskooljam | 2018-04-08 17:48 | Audio

Otis & Shugg

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We Can Do Whatever (2005)

これも何年振りでしょうか。棚から一掴みです。何故アンリリースであったか当時結構調べたはずですが、すっかり忘れてしまいました。ただこの盤だけはちょっと素晴らしすぎますね。

確かトニーズのラファエルが全面的に手掛け、適材適所なゲストも用意された上で、結構な予算を掛けて制作されたメロウなソウル・デュオ盤なのですが、ウラ業界では超有名なあの御方が尽力し、UKからではありますが正式にリイシューされたというのが経緯だったはずです。

とことんMellowで泣かせまくる"My Choice"、"Thank You For My Baby"辺りを聴けば、今やR&Bシーンそのものが、この時点より更に遠くまで来てしまった印象を拭えません。勿論そうではない作品もあるのでしょうが、純粋にソウル魂(変な日本語です)だけで勝負できる市場そのものが、現在は壊滅的な状況という訳なのでしょう。

もう非難されることを承知で書いてしまいますと、現代はあまりに情報量が多すぎるのです。そのため情報の制御ができず、与えられるばかりの心地いいこの状況を良しとし、良いものを辛抱強く探し出していくという行為そのものが不要となり、その結果、若いソウルの聴き手やディガーがどんどん減少していっているような感覚を覚えるほどです。うーん。

これは老いぼれの戯言なのでしょうが、読まれていて意外と共感される方もお見えになるのではないでしょうか。最近私はそれくらいこの業界に危機感を抱いています。ハイ。とはいえ、これは4/1の所感ですからお間違えなく?





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# by olskooljam | 2018-04-01 18:27 | Unreleased

Sho

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Strickly Street (2004)

久々のインディソウル。これがあのShoの1stかと思われますが、このフィジカルは非常に珍しい一枚ですので、これが初見という方もみえるかもしれません。

実際私も手に入れるまで数年掛かりましたが、最近でも某ショップの広告にて姿を現したのが、何ともう5、6年ぶりのこと。本当にほとんどみませんので、原盤はおそらく国内では数枚(!)いったところでしょうか?正直あのAverage Guyzの原盤よりレアなのではないかと思うクラスです。とはいえ、あんな鬼レア盤のAveragesですらも驚愕リイシューがなされましたので、今後については何が起きるか分かりません。

ShoはR&Bファンをシビレさせたあの2ndと、そして完成度抜群の3rdにおいて評価は既に確立。しかしこの1stの時点でスタイルは出来上がっています。

私の好みは淫靡なミッド・スロー"Fa' You"や、語り入りの"You Say"辺り。特に後者は非常に丁寧に唄われたスロー・チューンであり、自身で付けたハーモニーとの絡みが絶妙な仕上がりです。"Love Is A Crime"でのハモンド使いなども、R&Bスタイリストとしての卓越したセンスを感じます。

最近はインディソウルはあまり聴いていませんでしたが、こういう良い内容のお皿と出会うとまた格別ですね。やっぱりソウル・ミュージックはやめられません。最高の一言!

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# by olskooljam | 2018-04-01 12:19 | Rare & Obscure

Diana Krall

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Turn Up The Quiet (2017)

今のところの最新作。Dianaの作品については、あまりに好き過ぎて全て制覇したところですが、このAlbumも聴けば聴くほどにいいです。

当初はちょっと全体的に落ち着き過ぎているという印象でしたが、彼女のキャリアや年齢(ごめんなさい)を考えれば、当然こういう境地に行きつくのでしょう。制作は大ベテランのTommy Lipumaです。

全曲スタンダードということもあり、雰囲気出しまくりのノスタルジックな世界観。私の好みは"Moonglow"や"I'm Confessin' (That I Love You)"辺り。特に前者は個人的にこのAlbumのハイライト・チューン。最初はあまり気にしていなかったのですが、ギターの音色がどうにもこうにも最高なので、一体誰だろうと見れば何とあのMarc Ribot!

これには心底驚きました。Marc Ribotといえば、私が若い時夢中になったギタリストの一人。1stのルートレスの変態ぶりには、当時友人と相当語り合ったものです。Art Lindseyとかあの界隈については、もう大好きなんですよね。



上記は割と最近の演奏ですが、一体今いくつなの?という感じです。相変わらずアヴァンギャルドで、むしろ若い時よりギンギンなギターに痺れてしまいます。

"Mooglow"はDianaの落ち着いた唄声と、Ribotのノスタルジックなギターの溶け合うような瞬間があります。深夜にIEMで聴く中盤のソロなどは、最高過ぎてもう何度も何度もリピートしてしまいます。

この人脈についてはおそらく想像するに、旦那のコステロあたりが紹介したような感じなのでしょうが、それを良しとするLipumaの懐の深さ、耳の良さが凄い。結果的に極上の演奏が実現したのだと思います。



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# by olskooljam | 2018-03-17 11:23 | Jazz Vocal

Grant Green

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Slick!- Live at Oil Can Harry's (2018)

本物の音楽フリークの方の中には、もうBob Dylanしか聴かないよとか、Stonesなんかは来日しても(あえて)行かず、ブートしかコレクションしないとか凄まじい方がみえます。

先日もある雑誌で、なんとこのGrant Greenのお皿しか集めていないという方の記事を読みました。いやはや、世の中には本当に凄い方がおみえになるものです。

さて、そこでこのお皿。何でも1975年9月の、カナダはバンクーバーで録音されていたというライブ音源。もちろん初出の未発表作品です。70年代のGreenといえば、バリバリのジャズファンク期ですから、ソウルファン的に相当に期待が持てますが、私が気になったのがこれ。

Medley - Vulcan Princess (Stanley Clark) / Skin Tight (Marvin Pierce, Clarence Satchell, James Williams) / Woman's Gotta Have It (Darryl Carter, Linda Cooke, Bobby Womack) Boogie On Reggae Woman (Stevie Wonder) / For the Love of Money (Leon Huff,Anthony Jackson) (31:57)

私の師匠の曲をはじめ、ファンが泣いて喜ぶソウル・オールドスクール・セオリー!なんと当時はこんな感じのメドレーを演奏していたのですね。しかも30分以上に渡ってジャムるとは!観客の反応がどうなのかも含めて聴くのが楽しみです。ジャケットも実によく分かっていらっしゃる。
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上記写真は、おそらくCDに封入されるであろう当時の演奏の様子。メンバー全員なんというカッコよさ!こんなの生で観れたら最高だろうなあ。

これはもう完全に必携、必聴級の作品。

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# by olskooljam | 2018-03-15 10:09 | Jazz Funk