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音質。良い音。そして個人の好みの音

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ちょっと間が空きましたが割と近めの更新です。(ポータブル系の)オーディオファイルの一人として、日々あーだこーだ機材を組み合わせているのですが、その中で音質について色々と考えています。そこで少しだけブログにまとめて、エントリーしておきたいなと思います。

音楽については最近はXのほうに書くことが多いです。Xは字数の問題はあるものの、音楽好きな方との情報交換の場として、とってもいいなと感じて参加しています。また私の知っている古め?の情報が(もちろん見えませんが)多少はどこかで誰かの役にたっているような?いややっぱりそうでもないような?気がしています。しかしながらオーディオについては、どうしても話が長くなりやすいので、このようにブログやnoteに書くほうが、相性は良いような気がします。

音楽鑑賞においては、普段から音質を気にして聴くことが多いです。結局は据え置きでもそうなのですが、ポータブルオーディオでも、ハイエンドに近づけば近づくほど隙が無いというか、(当たり前ですが)高中低全く過不足のない音質が求められます。それは周波数測定値においても同様です。そしてそれが所謂「良い音」と言われるものなのでしょうが、個人的に行き着くところは果たしてそこなのかな?といつも考えてしまいます。

例えばこれは極論なのかもですが、(広義の)オーケストラの演奏だけを聴くのであれば、それが最適解なのかもしれません。あのダイナミックレンジが異常に広く、全ての要素を高レベルで求められるクラシックは、できる限りハイスペックで、且つハイエンドなシステムで聴くのが(当然ですが)最高かと思います。

クラシックについては、私は全く聴かない訳ではないのですが、早くもっと興味が出てこないか、自分で自分を(どこかで)待っている状況です。しかしながら既に半世紀近く黒人音楽、ブラックミュージック中心で聴いています。特に人生で一番勉強しなくてはいけない学生時代なんかは、大事な勉強の時間を削りに削り(笑)、それらをまるで、浴びるかように聴いてきたというのが現実です。ですので、元々の教養や素養がほぼありません。そのような訳で、おそらくそこまではいかないのかもなあ..という感じです。

何より、ではソウルもジャズも、ヒップホップもレゲエも聴いて、映画も観て、ポータブルオーディオやホームシアターにも凝って、スポーツ観戦やドライブも旅行もして、仕事は勿論、家族や友人との時間も作っていくというと、いやいやもう時間が圧倒的に足りないというのが現実です。そう考えますとクラシックまでは完全に無理っぽいですが、勿論この先どうなるかまでは分かりません。

私が聴く音楽の中で、特に音質を気にするのはジャズです。ジャズといっても広義になりますが、最近の録音だけではなく、50年代のヴィンテージな録音であっても良質な音源が多いです。そのため、イヤホンやヘッドホンを変えることで、まるで違う感覚で作品が楽しめます。ジャズの録音は古いものでも、どういう訳か良いものが多いのですが、これは録音技師が優秀なのか、あるいは楽器数が少なくアコースティックなので、一発録音に近いものが多いためなのかな等と考えています。

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Miles Davis - Kind of Blue (1959)

例えば定番のKind of Blue。実に今から半世紀以上前のなんと1950年代の録音です。これはハイレゾ版が用意されているように、驚くべきことに今でも高音質録音として有名です。音自体には、マスターテープ起因?のヒスノイズはあるものの、再生装置によって随分と印象が変わります。そのため機材を変えた時は、まず絶対に試聴に使用しています。

逆にヒップホップやレゲエについては、あまりそこまでは音質を気にしていません。ブーンバップやダンスホールなどは、コンプの効いたカセットやラジカセで(出来る限り大きな音で)鳴らしたほうが、より雰囲気が出てきます。勿論良いシステムで聴いても全然楽しめますが、どちらかというとタキシードを着用して聴くような音楽ではなく、ざわつくストリートで皆が一緒に楽しむもの。音質ファーストではなく、やはり音量こそが優先という印象です。

R&Bとソウルについてはその中間という感じです。モータウンやアトコなど古いものは、そこまで音質が良くないものが多いのですが、PIRなんかはめちゃくちゃ洗練されていて音質もとても良いです。90年代のR&Bだと、テディーライリーが係わった作品なんかは、音圧が物凄く、抜けも良いものが多いです。ですので、中には音質ファーストで聴けるものも充分あるのかなという感じです。

閑話休題。今現在個人的に最も好みの音を出してくれるオーディオ機器。手持ちの機器のヘッドホンでいえばHD 650。IEMでいえばPinnacle P1がその筆頭です(据え置きのヘッドホンアンプではCreek AudioのOBH-21(Mod)です)。どれも特に中低域が充実しており、濃厚一歩手前で且つまったりとした音像、落ち着いた味わい深い音。どちらの機種も正直に言いますと、あまりすっきりしないような、またはっきりしないような、抜け感の少ないちょっとくぐもったような?音質。例えば多ドラやハイブリッドIEMの音のように、スカっと抜けるように爽やか!という表現が最も似つかわしくないものです(この2つは試聴ではまるでインパクトのない音ですので、騒がしい店内だとあまり良さを理解できない機種かと思います)。

またただ抜けが良くないというだけでなく、これは主観ですが、そのもうちょっと先に(実際は何もないのに)もっと更に何かあるのでは?と感じさせるような音です。それがこれらの機種が私を魅了する理由の一つでもあり、完全に音が分析されないけれども、古いソウルやジャズが対象であるがゆえに、上手くマスキングされた、独特の雰囲気を感じさせてくれます。このようなジャンルの音楽を味わい深く楽しめるのは、結局最新の機材でなく、HD650のように最新ではなく古くからある機器で、且つ現在もまだスタジオなどで、一部現役で活躍する機種なのかと思います。

所謂カマボコと言われるような、ドンシャリとは対極となる音作り。まずはこれが基本で、特に中低域に厚みが感じられる濃厚な出音が好みです。HD650もP1もDAP直刺しや出力の小さなアンプでは、本領までは発揮されません。中古で出ているものを見るたび、ああこの中には、合う機材で本当の音を聴いていないモノも含まれているのかも?と感じてしまいます。
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据え置きアンプではOBH-21(モディファイされたもの)を使っていますが、これも出音は比較的地味な感じです。奇をてらうようなことは一切ありません。高中低とても自然で、まるで渓流で水が静かに流れているような出音で、いつまでもずっとゆったりと聴いていられる。そんな印象です。こちらは以前のエントリーでも書きましたが、中身をみると驚くほどスカスカで、部品数の少なさに驚かされます。ところが出てくる音は程よい透明感があり、上品で麗しいという相反するもの。OBH-21はイギリス製ですが、あの国ならではの天候とか繊細さが音に現れているのかもしれません?

ここで好みの音を抽象的ですが表記してみます。

・高音 
ほどほどで充分。解像感は欲しいのですが、刺さるのは(聴き疲れてしまうため)とっても苦手。なんなら少しだけこもっていても大丈夫です。またざらつくのは苦手です。かといって雑味が少なくだけで、甘くキレがない音は魅力がありません。何となくのイメージだけなのですが、例えばDACで言うとBurr-Brownや旭化成(AKM)。この2社については音にコクとキレが共存しており、大体好みに合うものが多いです(PCM1795はちょっと大人しいのでそこまでですが)。逆にESSやシーラスロジックなどは若干甘み成分が強く、好みと合わないことが多いです。イメージとすれば、透明感の中に、豊かなコクが感じられるような高音が好みです。

・中音
量感があり更に唄声に倍音成分や色艶が感じられればベスト。とはいえ響きすぎるのもダメで、あくまで自然な感じで拡がっていくような音がいいです。個人的には何より一番重要視する音域です。ここの領域で音の良し悪し、好みが決まる感じで、どの機器を試聴してもこの音域に魅力が感じられないと購入意欲が湧いてきません。

・低音 
量感はしっかり欲しいのですが、キレが悪くボワつくのはイヤです。ある程度の抜け感と、スピード感が感じられるものが良いです。例えばER-4Sの締まった低音で且つそこに量感が付与されればベストというような感じです。また層が欲しいです。映画でもそうなのですが。

・立体感・音場 
広さは欲しいですが、まるでお風呂のようなホール感は好みではありません。ほどほどというか、録音されたスタジオや、ライブ会場そのままの広さが表現されるもの。この領域の味付けは、チューニングのさじ加減によるものというか、ケーブルでいえば、銅線に適度な銀メッキというのが、やはり無難だという感覚で捉えています。ここは本当好みの世界で、モニター調なのか、リスニング的な味付けなのか、最終的には聴き手(の環境や聴くジャンル)にゆだねられるものじゃないかなという印象です。

全体的な音のイメージ
少しウォームな音が好みです。寒色系のクールな音は、最初はいいのですが、徐々に飽きてきてしまいます。音を言葉にするのはとても大変(どうしてもポエマーになりやすいです)ですが、出音から音楽的なニュアンスや、深みが感られるもの。ざっくりというと、中音域を中心に、色気のあるややリスニング向きの音というのが好みの音です。どの機器を試聴する場合でも、その点を常に気にしています。

またスペックについてですが、イヤホンによくある16Ω/110dBみたいなのは興味が出てきません。出来る限り高抵抗で、且つ感度も100dB以下のものが理想的です。最近はDAP単体でもヘッドホンを鳴らせるものが多いので、イヤホンでも、ヘッドホン様のスペックのものが欲しいところです(例えば300Ωのものとか)。
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音質の進化について
結局のところ、ポータブルオーディオの音質については、既にここ20年ほどの進化の中では、ほぼ限界点に近い?ような気がして仕方がありません。所感としてそう感じるのは、例えばWM1Z(2016年製:廃番)やHD650(2004年製:現行)の存在。これらが現行の最新機種と比較して、では純粋な音質で明確に劣るのかどうか?というと、いや、そこまで大きくは劣らないというか、選択はもはや音の好みとそのデザイン、そして機能等ではないのかな?ということです。何よりこのHD650がまだ現役で販路が確保されているという事実。大変な数の商品が販売されている中で、いまだにこれを選ぶ人がいるということは、そういうことなのだと思います。

完全に過去の名作や現行製品の傑作を、まるで置き去りにしてブレイクスルーするような、革新的な機器(や素材)が出てこれば話はまた別です。例えば、ハイエンド級の機器でも(例えばオーテクのモニターライクな名機ATH-ADX5000とか、極上ドンシャリ機メゼのEmpyreanとかとか)現在のところは、今ある音の延長線上にあるような印象です。

またPinnacle P1やT8iEについても同様です。どちらも2016年製で残念ながら廃番品です。特にP1のほうはHD650のように、大変落ち着いた魅力溢れる音色のIEMで、現行で音が似ている機種があまり思い浮かびません。1DDという仕様の問題もありますが、たまに最新機種を試聴しても、やっぱりPinnacle P1やT8iEより、大きく飛躍した魅力を感じる機種にはまだ出会えていません。私自身が年齢による耳の劣化という部分を差し引いても、P1やHD650は(組み合わせる機種にもよりますが)まだまだ使えるんじゃないかなと感じています。

しかしながらこれは、私が聴いている音楽ジャンルにも影響されていると思います。古いジャズやソウルを中心に聴く中で、落ち着いた上記の機種が、それらにとても相性が良いということなのかもしれません。

ではもうこれで機器は打ち止め?かというと、いや意外とそうなのかもしれません。ポータブルオーディオにハマってもう相当経ちますが、めちゃくちゃ欲しい機材が減少してきたというのが事実だからです。勿論全くゼロという訳ではないのですが、これ以上のクラスの商品とか、ハイエンドとかには、どういう訳かそこまであまり興味が出てこないのです。Xなんかでも、凄い高額商品をポストされている方がそれこそ何人もいるのですが、みていて単純に凄い!と感じます。ただそれをうわー自分も欲しいな、という回数が確実に減ってきています。

今どうしても欲しいというか、試聴して気に入ったポタアン(ポータブルアンプ)は1台特注で注文済みです。またもう1台気になっているのは、知る人ぞ知るtueksさんの新作(BT-1/4”)です。ヘッドフォンについてはT3-01のモルト版。もし在庫があれば購入したいなと考えています。イヤホンについては、今レギュラーの4つ(Pinnacle P1・X10 MOD・T8iE・MagicOne)で満足しちゃっている状況ですので、絶対欲しい!という機種には、現在のところまだ出会えておりません。

原因として考えられるのが、今の自分のシステムが以前と比較すれば、かなり満足できているというのと、ハイエンドについては興味がないことはないのですが、それに伴いサイズの問題が出てきます。音質ファーストですと、どうしてもサイズは大きくなることが多いため、物理的に自宅の(狭い)書斎には収まりきらないという、本当に個人な問題に直面します。基本的に大きなシステムについては、長岡鉄男さんとかの書物を参考にして、若い頃には結構組んだのですが、今はどういう訳かそこまで興味が出てこないのです。幸い家族は私のオーディオ趣味を(完全に呆れながらも笑)理解してもらえていますので、購入の障壁は少ないのですが、やっぱりハイエンドの機材で欲しい!と思う商品(PHONITOR XとかVIOLECTRICのV281とか)は、結局どれもこれもが大きいんですよね。置き場所のイメ-ジが付かないです。自宅には空き部屋数が多いので、どこかを防音工事して専用室に、という考えもないことはないのですが、どちらかというと四捨五入で終活のほうが近いので?今更そこまで凝ることはないかも笑。

最近IEMについては、平面駆動や骨伝導など、新技術が投入されています。それを更にDDやBAなどと組み合わせたものなど、複雑でハイブリッドなタイプの製品も多く出てきています。ドライバー数が多くなりますと、立体感みたいなものは増してくる印象ですが、位相管理という面では難しくなるかと思います。その為技術的にもとても難しくなると思うのですが、IEMの音世界が飛躍する可能性を感じています。

評判の良いKiwi EarsのQuintet(DD1、BA2、平面駆動1、骨伝導1の5ドライバー)なんかはじっくりと試聴しました。クインテットは驚くことに、出音自体は結構まとまりが良いです。高中低どれも切れ味も良く、位相についても違和感がありません。これはとても良く考えられているなというIEMでした。ただそれでも、今まで聴いたことがないという感覚ではありません。あくまで延長線上にある良い音の一つという印象です。これからも更に色々な組み合わせのものが出てくるのでしょうが、聴き手を驚かせるような音や、経験したことのないレベルの音に出会いたいなと思います。


※ ※ ※ 


音質。良い音。そして個人の好みの音。結局はああだこうだと色々探したり、組み合わせたりしている時間こそが楽しいだけで、そこにゴールはありそうでないのかもしれませんね。結論のような結論でないような?

# by olskooljam | 2024-11-20 22:29 | Audio

tueks BT-02

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ポータブルオーディオネタは久しぶりのエントリー。最近入手したポータブルアンプについてなのですが、これはちょっと驚いたといいますか、色々と感銘を受けましたので、取り上げてみたいと思います。

この製品の販路について
こちらは通常の販路に載っているものではありません。上記のBOOTHにて頒布されているだけのもので、いわゆる同人誌的な(マニアックな)製品。BOOTHについては、クリエイターの皆さん個人が、手作りで色々とこだわって作られているものを、とても販路にのらない量ということで、頒布という形式にて少数販売されているものです。私は以前からサイトの存在だけは知っていましたが、実際にモノを入手するのは今回が初めてのことです。

この製品の立ち位置について
BT-02は正式にはワイヤレス・オーディオ・アンプという種類になるそうです。機能としては、BT環境下で使用するためだけに特化されたもので、通常の入力端子(3.5mmアナログ等)は最初から装備されていません。またボリュームすらありません。3.5mmの出力端子・電源スイッチ・BTのオンオフ・充電用USB-C端子の4つのみ。極めてシンプルです。その為か筐体はものすごくコンパクトです。私が組み合わせているiPhone SEと比較しても全然小さくて、イメージとしてはまるで名刺入れみたいなサイズです。いやそれより更に小さいほどです。うっかりすると無くしそうなサイズで、その点が逆に心配になるくらいです。

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筐体について
ケースはアクリル製。品質の良いものが使われているようで、透明度がすごいです。中身は(あえて)完全にみえるようになっています。バッテリーや電解コンデンサなどむき出しになっていて、しかしそれらがコンパクトな基盤と筐体に、大変綺麗に収められています。まるで美術館にでも展示されていそうなデザインにもやられてしまいました。このようにサイズは小型なのですが、持ってみるとこれが意外な重量感。それがまた質実剛健的な良さというか、モノとしてしっかりパーツが吟味され、一つ一つ作られているんだなと実感させられます。

出力端子について
3.5mmアンバランス1つのみ装備されています。3極か4極かは不明ですが(なんとどうやら4極らしいです)、個人的にはバランス端子より、アンバランスのほうが(音質面も含めて)好みですので、これはこれで全然大丈夫というか満足です。

アンバランスは構造的に左右の音が交じり合うのですが、自然界でもそれは当然のことです。両耳には別々の音が聞こえている訳ではなく、同じ音が交じり合って聞こえている訳で、そう考えれば完全に分離されたバランス端子は、聞こえ方に最初違和感があるというのも、それは当然なのじゃないかな?と思います。とはいえどちらも一長一短ではあるので、最終的には好みの問題で良いかと思います。

組み合わせる機材と音質について
上流として組み合わせるのはiPhone SE3です。SEは普通に汎用なアイフォンですが、このコンパクトさが魅力で1から3まで浮気せず、ずっと継続して使用しています。ちなみに子どもは既に16なので、うわ!親父マジでダサいわと言われています笑。携帯電話も最近はどんどん巨大化し、ポケットから完全にはみ出す感じなので、常に小型のものを欲してしまいます。サイズ感だけでいえば、ガラケー全盛期のほうがまだ良かったなと思います。IEMについては、Pinnacle P1やMagicOneなどを組み合わせて常用しています。T8iEはややホワイトノイズが感じられましたので、BT-02とは組み合わせて使っていません。

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Earl Klugh - Solo Guitar (1989)

アール・クルーのアコギが冴えわたる名盤。こちらはアコースティックな音源の代表として良く試聴で使うのですが、BT-02と良く合います。程よい艶感が感じられて、キュッキュという弦の音等が心地よく響きます。また音が想像以上に横方面に拡がっていきます。この音源でもしDAPとブラインドテストを行ったとしたら?間違いなく見破れない方が続出するかと思います。

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Diana Krall - Turn Up the Quiet (2017)

ダイアナのヴォーカルが冴えわたるアルバム。彼女の吐息のような唄声は、ドンシャリ傾向が強い機材では、その魅力が半減してしまいます。中音域が上手く表現されないと、トロっとした艶感みたいなものは出てきませんので、そうすると味わいがさっぱりしてしまいます。BT-02はヴォーカル域の表現についても、これがまたなかなかいい感じです。程よい透明感の中に、潤いを帯びたヴォーカルが楽しめます。距離感的にはステージ上のダイアナの唄声を、中央やや後ろの客席辺りで聴いているような感覚です。音質的には上位機種などと比べれば差は感じますが、一聴するだけでは、そこまで気にならないレベルです。これはチューニングの妙といいますか、吟味されたパーツの良さや、基板構成の巧みさなど。その辺のバランスがとてもよく出来ているのだとしか言いようがありません。

聴いていて感心するのが、実際BT-02の音にこれ!といった際立つような特徴がない?ということです。無味無臭。いやそこまで全くない訳ではないのですが、アンプ固有の音みたいなものが、そこまで強くは感じられません。しいていえば、音に透明感と立体感、そして広い音場が付与される印象。アンプの持ち味より、イヤホンやヘッドホン自体が本来持つ音の特徴を、上手くサポートしてくれる。そんな感じなのです。一体全体どういうチューニングといいますか、パーツ選定等をされたのかとても気になります。出音がとてもアナログライクな自然で優しい音なのです。

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そして音を聴いている時に、一番驚くのがやっぱりこのサイズとデザインです。音を良くするならば、サイズは当然ですが巨大化していきますし、デザインはその犠牲になり無骨なものになりがちです。それがBT-02においては全てが逆なのです。スタイリッシュで中身はスケスケ。しかもこのミニマムサイズ。ちょっと訳が分からないのですが、実際にそうなのですからギャップが凄いです。Eイヤホンさんやフェスでも、こんな小さなアンプで聴いているような方は、あまり見たことがありません。一体なんなのでしょうねこれ笑

それと、先に記したように本体はボリュームレス構造です。音質的にはそれがメリットになるのでしょうが、デメリットとしては音量調整がiPhone由来になるので、刻みが大きく、ちょうど良い音量に調整するのが、意外と難しいということ。あとは高インピーダンスのものだと、そこまで音量が取れないということ。HD650だと何とかですが、電流食いのMoondropの傑作ヘッドホンPARAとかだと結構ギリです。但しP1(50Ω/96dB)のようなものでも、まずまず駆動しますので、そこまで絶対的な弱点ではありません。

大枠のジャンルとすると、ポタアン類に入るものかと思いますが、バッテリー込みでこんな小さなものは、ほとんど他にありませんので、それだけでも貴重なのじゃないかなと思います。ドングルDACまで入れると、アイバッソのDC-Eliteなんかはもちろん別格(あの音はちょっとヤバいですよね)なのですが、もし知名度さえあれば、BT-02は普通に人気商品になりうるんじゃないかなと思います。


※ ※ ※


まとめ
例えば外出先のカフェ等で、ちょっとゆっくりして、音楽でも聴きたいなと思う時。お気に入りの有線イヤホンが一つと、そしてこのBT-02がかばんの中に入っていれば、それはもう無敵です。荷物としても小さくて軽いですし、こんな良いデザインのアンプが、テーブルの上に置いてあれば、ちょっともうシャレオツですよね。実際に持ち出すのが楽しくなりました。

またアナログポタアンに対しての、BTラインアウト機(実際はBTフォンアウトですが)としても活用できそうです。サイズが小型ですし、送り出しとしての質も担保されていますので、出力の高いポタアンなんかであれば結構いけそうです。そこは工夫次第でしょうかね。こちらはのちのちの活用で、楽しみの一つとしたいなと思います。


※追記(2025/02/27)
ついに入手できたBT-1/4”。エントリーしたようにあちらはとても完成度の高い一台でした。それゆえ気付いたのですが、BT-02は音は良いものの、音の拡がりという面でのエフェクター類が、ちょっと過剰に効きすぎているのかな?と感じてました。なんというか音の味付け自体はそれほどないのですが、当初からあまりに(特に横方向に)拡がりすぎるなという印象でした。そこで本体に一手間掛けることにより、拡がりを抑えるように再調整。結果これがびっくりするほど素晴らしい仕上がりに。もう一度レビューし直したいほどお気に入りになってしました笑

# by olskooljam | 2024-11-07 20:47 | Audio

Xを通じて感じるこれからの音楽・映画の未来

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久しぶりのエントリー。最近はXばかりであまり更新はできておりませんが、映画はボチボチで?相変わらず音楽だけは聴いています。そこで最近色々感じていることがありますので、ここらでちょっと所感を記載し残しておきます。

まずXをみていて感じるのが、意外とその平均的な年齢層が(私も含め)高いなあということ。どの分野においてもそれ専門で詳しい方が多く、そうなりますとおそらく概ね40代以上の方が主?で、且つ皆さん経験値が豊富なんだろうなという勝手な印象を受けています。

特に映画に関しては私も相当な本数を観てきているのですが、いやいや半端なく詳しい方がもう何百人とみえます。今更何かをXで伝えたい.. という気持ちが完全に萎えてしまうほど凄いです。萎えるというか、正確には私と同じような感覚や感性の(評論家ではない)ごく一般の方がもうびっくりするほど多いのです。

おそらくですが50代以上のベテランさんが、皆さん映画好きとして、これだけは観てほしい!という名作、隠れた名作を大変上手くXで伝えられています。そこでそれらを既に充分観てきた者としては、正直この高レベルならROMしていいね!だけで、勝手に満足しちゃっているというのが現状です。

ただ中には、若い方じゃないかな?と想像するのですが、何人か映画好きをプロフィールに記載しながらも、ストーリーや結末を書いてしまうという、ちょっととんでもない方も拝見します。特に一番衝撃的だったのが猿の惑星のラストシーンを載せてポストされているのを見た時です。どう理解して良いのか、その事実に最初は仰天したのですが、それに対して特に誰もつっこむことなく?Xでは平常運転してみえるのです。おそらくは皆さん映画を見た感動を伝えたくて、あまり深くは考えずにエントリーされているだけなので悪気はないのかなと想像します。

このようにXでは一部に映画好きの方は、けして踏み込んでいけないネタバレ無法地帯?があるんだなという印象です。映画についてはこれからもまあROM中心で、たまに思うことや観たことを伝えていく程度でいいのかな?という感じです。

今度は音楽についてです。こちらも映画と同様で、各ジャンルごとに大変詳しい方が存在しています。特にロックやジャズ、そしてHIP-HOPの黄金期についてはその傾向が強く、物凄く専門的な知識と非常に良い耳を持ってみえるなという方を多く拝見します。

そのような方のポストは読んでいてとても勉強になり楽しいです。これはXをやっていて良かったなという部分で、たまにコメントしたりしても、皆さんさすがに的確で(気の利いた)返答がされますので、正直にうわすごい!と感じています。個人的にはこの方音楽好きなんだなあという感覚が、深い知見を感じさせる文面や写真から、お人柄と共に一緒に伝わってくるような、そして温かみの感じられるエントリーが大好きです。

私はといえば、メインインフルエンスであるソウルは勿論、ロックもジャズもHIP-HOPもレゲエも映画もポータブルオーディオも同レベルで大好きです。そのためXで出会えるような、各ジャンルの専門リスナーの方々とはちょっと違う、雑多で雑種なリスナーなんだろうなと思います。

そのため上記のような専門家の方とは一見同じようでいて、いやちょっとだけ異なるといいますか、どのジャンルにおいても同等に興味があります。その為いつまで経っても集中して、その一ジャンルだけを聴くことができないので、結局ジャンルの専門にまではなり切れないというのがジレンマの一つです。

それとこれは仕方がないことなのでしょうが、Xでは常に「時間」というのが気になっています。私はオーディオ(今はほぼポータブルのみです)も好きなのですが、オーディオにめちゃくちゃ詳しい方は、機器の選定と調整のほうに時間的な比重が寄ってしまいます。凝れば凝るほど深く楽しめますし、機器の上限がみえない深い世界ですので、一つの趣味としては最高かと思います。

しかしながら同時に幅広い音楽や映画を、それぞれに深いレベルまで追求していくとなると、それに費やす時間はオーディオ調整の時間分が絶対的に足りなくなってしまいます。私も日々、あのポタアンにこのIEMとケーブルを組み合わせて..なんてやっていますが、当然その時間は音楽はいつもの定番が活躍しています。

当然なのですが家庭や仕事、あるいは子育てなどもありますので、この趣味をすべて高次元で両立させることは、結局誰にとっても「時間的に」大変に難しいことなのかなと思います。

それとうちの上の子が実際そうなのですが、どのジャンルにおいてもルーツ立ててしっかり聴いていくということは、Xにおいても今の若いリスナーの方は、あまりいないような?印象を受けています。サブスクでは時代に関係なくオススメが出てきますし、今やレア盤も含め何でも好きな時に好きなだけ好きな音楽が聴けますので、若い方にとって古い新しいという概念はなく、自分にとって今心地良いか良くないか?の2択のような気がします。Xでも古い80年代の洋楽をこれいいです!とポストしているのが、実は大変に若い方であったりして、これは結構凄いことだと思います。

と言いますのも、以前はレア盤は勿論ですが、有名な作品であっても、限りある予算の中で優先順位をつけて徐々に聴いて制覇していくことしかできませんでした。ですのでああ、あの雑誌で取り上げられていたあのLPって一体どんな内容なんだろうか。おそらくプロデューサーが○○で70年代後半だからこんな感じだろうなとか、想像を膨らませていたものです。あるいはレコ屋の店長と仲良くなって、長居して聴かせてもらうなど策を講じたり。まだこじらせたマニア同士なんかだと、互いに絶対に完全な形では聴かせない!みたいな醜い争い?も頻繁にありました(笑)。

ちょっと逸れましたが、例えば、Miles Davis、King Crimson、Stevie Wonder、Marvin Gaye、James Brown、Charlie Parker、DJ Premier、AC/DC、Jimi Hendrix、Ornette Coleman、John Coltrane、Bille Holiday、Isley Brothers、Sly Stone等にしても、先人からの影響をと自らのオリジナリティーを上手く昇華させ、マスもコアも両方唸らせる唯一無二のミュージシャンが何人も出てきました。

今は完全なオリジナリティを感じさせて、音楽をよく知る古くからのリスナーを唸らせるような、革新的なミュージシャンや革新的なジャンルの登場は多くはないか、あるいはちょっとだけ小粒?じゃないのかなと感じています。いや実際並び立つような音楽界の本当の巨人とはっきり呼べるのは(今のところその最後はHip-HopですとJay Dee。ソウルだとD'Angeloくらい?)正直ここ数年あまり登場していないんじゃないのかな?と感じています。

ジャズフィールドでは凄いミュージシャンは、とんでもない数で且つとんでもなく高レベルの方が、世界中にゴロゴロしているのですが、じゃあではマイルスやモンクに並び立つような現代の巨人がいるのか?と言われれば、やっぱりそうとは言い切れず。ちょっとだけ小粒感を感じてしまいます。

ミュージシャンの世界は達人の集まりですので、身勝手なリスナーなんかには分からない特殊な世界。ですが同時に、良い聴き手や良い語り手が、世界中に多く存在していなければ、どちらも発展がありません。難しい問題ですが、共存共栄が理想と言えば理想かな?と思います。

これらの事実を踏まえますと、映画観賞と音楽鑑賞という趣味的な世界においては、確実に昔と違ってきているなと感じます。昔ながらの各分野特化の熱狂的なマニア、フリークが生まれてきた時代は、必要な情報が手元になかったゆえに、飢えた本物の鋭いサブカルマニアが多く生まれたのでしょう。

今の時代は、社会情勢の変化と、携帯電話をはじめとするIT機器の急激な進化によって、逆にマニアがもの凄く生まれにくい環境になってきたのでは?と感じています。それは勿論クリエイターや演者の方にとっても影響がある訳で、互いに影響、刺激し合ってこの文化を高めていくという部分が、どこか欠落してくるのではないかなと危惧します。

電子レンジ的に便利で、一発で聴き心地の良い音楽や、いつかどこかで観たかのような内容の映画ばかりが量産されて、次第に質の高い音楽、オリジナリティーのある映画が少なくなってくる。実際今現実の多くがそうなのではないのかな?と、Xを通じて日々感じていたりします。

イメージ画像で添付しましたが、力強い音楽は困難な時代背景の中で生まれてくることが多いです。Hip-Hopが現在の地位を築いたのも、その苦しい時代があったからこそ。これからの時代の中で、どんなミュージシャンが出てくるのかは勿論誰も分かりませんが、そこにガラパゴス的な?特殊な要素が必要なのかもしれません。

さてそんな訳で本題の音楽と映画の未来。今や先人によって全ての表現がもはや出尽くしたようなこの世界。オリジナリティーの少なくなった世界の中で、今後は今までの人に替わって、今度は革新的なAIの登場と、一部の先進的なクリエイターが合体して活躍するような気がしています。音楽についてはあのビートルズの新曲のようなことや、聴き手が勝手に古い音楽をアプリ上でブレンドさせて、処理して実際は無い曲をあたかも存在する曲のように聴ける時代が来るような気がします。

あと絶対あるだろうと予想しているのが、聴き手による音楽の高度なリミックス。例えばオリジナルではヴォーカル域がオケより奥に位置するような録音。これをアプリ上で、グライコなんていうレベルじゃなく、音質劣化を一切感じさせずにまるでスタジオで本物のミキサーがやったように再生できるようになるんじゃないかなと想像しています。また特定の楽器だけ抜いて再生もできるようになったり。著作権の問題はありますが、技術的には今はそういう時代の、もう一歩手前だということなのだと思います。

映画については、CGの高度化とゲームクリエイターの進化により、映画が先かゲームが先か、どちらも同等のクオリティのものが出てきそうな気がします。シナリオについても、今でもそうなのですが、小説ではなく漫画やゲームが原作のものが、それらを凌駕していくことになるでしょう。特にこの分野では知的な日本人の活躍が今以上に期待できますが、それらの多くの方は、基本オタク文化的なものなので、先人に比べると実体験の絶対量が少なく、古い表現力豊かな名作群を超えていくということは、やっぱりなかなか大変な時代に突入していくような予感がします。

先日観た映画でイタリアの「墓泥棒..」は、可能性を感じました。これは人間の業を深く描いた作品でした。人の深い感性を捉えていくような内容や表現であれば、これからは更に狭く細い道なのかもしれませんが、そのような小作品こそが、本物の映画マニアの溜飲を下げてくれるのかもしれません。

今度は音楽の聴き手についてです。(一般的な)若い聴き手の方においては、過去の黄金期の情報量の異常な多さと濃さ、深さを全て処理することまではできません。それぞれのジャンルにおいて、代表的で且つ表面的な部分においても有名なミュージシャン(例えばソウルでいえばマーヴィンやカーティスやダニーなどまでが一般的に好まれる代表であって、ケニ・バーグやケニー・ハンバーとか、あるいはルー・カートンやオリバー・チータム、ジェームス・フェルプス等までは普通は伝わらないし、結局そこまで深くは聴かれないみたいな)ばかりが聴かれるような気がします。それ以上深入りしたとしても、最新の音楽もドンドンリアルタイムで出てくる現状では、他の情報が多すぎて、聴き込む時間が追い付かないような気がしています。

未来では当たり前ですが、結局リアルタイムで各ジャンルの本当の黄金期を体験することができないので、その時代特有の空気感や背景までは充分に伝わらず、多くをネット上等で追体験する専門家ばかりが存在するようになってきます。ただネットからの情報量は膨大ですので、これだ!と思ったジャンルに特化するのであれば、音楽でも映画でも、逆に昔の評論家を淘汰するような詳しい(いわゆる博士ちゃんみたいな?)専門家が表れてきそうです。

実際最近ちょっと驚いたのが、本屋で映画の専門書を選んでいた時です。実に深そうな専門書でめちゃくちゃ詳しそうな著者の方が、私は中学生の時にセブンを観て衝撃を受けて..という記載をみたのです。いやいやそのとんでもない若さ!その事実にこちらこそが衝撃を受けてしまいました。もはやそんな世代の方が映画の専門書を発刊する時代なんだという。まあでもそれはこちらが単に老いただけで、これからは更にもっと若い方が、往年の名画を語る時代が来ているという訳です。


※ ※ ※


私はもう初老というより、今やどっぷりと中年の仲間入り。Xでもブログでも、気付いた誰かがみて単純に楽しんでもらえればというスタンス。これは今も昔もまったく不変です。このブログを昔から知ってみえる方はご存じかと思いますが、ジャズを語るにしてもソウル、HIP-HOPを語るにしても、知っていること、実際に見たり経験してきたことを伝えると同時に、音楽に対する愛情がちゃんと伝わること。そしてそれに対して絶対に嫌味を感じさせないこと。そして誰かがそれを観たり聴いたりして、おおホントにいいじゃんこれ!と共感してもらえること。このブログでもXでも、常にそのようなスタンスでエントリーができればなと考えています。

なんだかまとまったようでまとまっていません?が、最近はそんなことを考えながら映画を観たり、音楽を聴いていたりします。

# by olskooljam | 2024-10-03 22:40 | Other

Sony NW-WM1Z

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ここ数年はメインDAPとしてWM1Zを使っているのですが、そういえばブログでは一切触れていません。そこで改めて簡単なインプレッション(自分用メモ?)です。

私は元々はWM1Aを使っており、あれは本当に万能なDAPでしたが、いかんせん手持ちのヘッドホン(HD650)とイヤホン(Pinnacle P1等)が鳴らせませんでした(&音が微妙ですが好みから外れていきました)。その理由により手放すことになりましたが、あのOSとサイズ、使い勝手の良さ(BTレシーバー・USB-DAC等)は単体DAPの完成形と言って良いものです。

そこで上位機種であるWM1Zならば、同機能を有しますし、その濃厚な音色により?高インピーダンスのものでも結構鳴らせるという評判を聞いたことにより、導入に至ったという訳です。以下は手持ち機種でのインプレッションになります。

所有機との組み合わせ・相性

HD 650 (300Ω/103dB)★★★
ゼンハイザーの生ける伝説。まずはアンバランス側ですが、これが意外というか結構な良音。1Aとの組み合わせでは、淡白な感じの出音となり、そこまで良い印象はなかったのですが、1Zは違いますね。全音域めちゃくちゃ粘ります。さすがにゲインはHで、ボリュームについては100近くまで上げる必要がありましたが、HD 650独特の濃厚な世界はこのDAP単体でも表現されます。HD650は上流を上げれば上げるほど追従してくるようなヘッドホンなのですが、据え置きでなく、単体でここまでの音が聴けるならば、この組み合わせは結構ありかと思います。

確かに専門誌における1ZM2の相性表においても、(同じ300Ωの)HD800Sとの組み合わせが良いと記述されておりますが、聴く前は、いやそもそも単体DAPでは鳴らないんじゃないの?と思っていました。いい意味で予想外の相性の良さです。程よくツヤが感じられる出音で、まったりシットリという印象。切れ味みたいなものは全くありませんが、これはこれで落ち着いていて好みの音世界です。WM1Aでは印象が良くなかったのですが、これは小さな収穫です。

次にこれをバランス接続。けして悪くはないですが、WM1Aと同様で、バランスではHD650の本領発揮とまではいかない印象。濃厚な音色についてはとても雰囲気が良いものの、いかんせん低域の粘りと鳴り方という意味で、そこにどうしてもパワー不足を感じてしまいます。さすがに300Ωの壁は厚いなあという印象。

HD650のような高インピーダンスのものは、至極当たり前ですが、やはりポタアンや据え置き(手持ちではCREEK AudioのOBH-21(Mod)が異常に凄く合います)で聴くのが一番自然でイイ感じです。HD650についてはアンバランス側主体で聴くことにしています。

Pinnacle P1(50Ω/96dB)★★★★
マニアに支持され続ける1DDの隠れ名機。こちらは50Ωで96dBという、単体DAPにはちょっと厳しいスパルタンな仕様。勿論つなげば普通に音は出ますが、シングルエンド接続では中低域の躍動感みたいなものまでは出ず、とても落ち着いた音です。WM1Aではそこまで相性が良くありませんでしたので、これはこれで充分健闘していると思います。

ところがこれがバランス接続ならば、文字通りの良バランスに変化。低域の表現については、シングルエンドのアナログポタアン(手持ちだと例えばALO製National Ampやエレキット社さんの名機TU-HP02)等と比較すれば、バランス接続ではすっきりとし、やや重みが軽減される傾向ですが、比較しなければ充分な量感と階調表現。高中低と、よりフラットなバランスとなり、(据え置き駆動時の)ヘッドホンのHD650などと非常に近い(印象の)音色となります。

P1は元々横方向に音が拡がる特徴があるIEMなのですが、WM1Zとの組み合わせだと、更に音場が拡がり大変なことに。両者の組み合わせだと、あまりに特徴が出てしまう音色ですので、長く聴いているとちょっと怖くなるような?感覚に襲われます。この組み合わせによる濃厚且つ立体的な音は、かなり個性的ですので、音が良い悪いというよりも、聴く人やジャンルによって、評価が変わってくるような気がします。アコースティック系の音楽には抜群に合いますが、音数の多いロックなどはそこまで楽しく聴けません。ただしこの表現は、個人的には全然嫌いではありません。

Klipsch X10 (50Ω/110dB)mmcx Mod ★★★★
シングルBA方式の古典。名機中の名機。エヴァーグリーンとでも言うべき完成されたイヤホンですが、私はX10が好きすぎて、同じものを3つ所有しています。今回はE4UAさんでモディファイされたモノを、シングルエンドで運用。バランス接続でも聴きましたが、クリアーになる過ぎるというか、どうしても低域が薄くなる感覚がありました。

シングルエンドでの接続であれば、元から定評のある(1BAの域を超えた)中低域表現が充実。本来の魅力がマシマシになり、聴いていて今一番気持ちが良い組み合わせです。Earl Klughの名盤Solo Guitarなどを聴くと、アコギのボディに響く弦の張り具合(!)までが感じられてゾクゾクします。以前のメイン機であったWM1Aでは、さすがにこのレベルまでの音は聴けませんでした。WM1ZとX10はこれ以上ないほどめちゃくちゃに合います。これはハイエンドとかミドルとか関係なしに、素晴らしいの一言。


AFUL MagicOne(38Ω/108dB) ★★★★
昨年末にリリースされたばかりの新型IEM。チューニングに評判のあるAFUL社が出した1BAということで、最初から期待値が高かったのですが、これがまたWM1Zとめちゃくちゃ相性がいいです。MagicOneの音色はX10と近い印象です。まず中音域が近めで程よい立体感があり、明るさについてはややX10を上回っています。

音の拡がりについては、X10と比べると分が悪いですがまずまず。1BAということで心配される低域についても量感が感じられるようにチューニングされており、例えばジャズのピアノトリオなどでは、いやもうこれでいいんじゃないのかな..と思わせるほど。ほどよく艶の感じられる音色とその安定感。ただしX10と同様ですが、音数の多い音源については苦手で、細かい描写等がぼやけてしまう印象です。しかしこれはこれで完成されており、良い組み合わせの一つかと思います。


E3000 Mod(16Ω/100dB)★★★★
final社の稼ぎ頭。これのプラグを専門店にて、VIABLUEにモディファイしてある特注品のE3000。手持ちの中では安価なほうのイヤホンなのですが、これWM1Zとの相性が良いです。知らない方にもしブラインドで聴いてもらった場合、元の値段を当てられる方はいないかも?それくらい素晴らしい音が出てきます。

けして刺さらず落ち着いた上品な高域と、ウェルバランスで粘りのある中低域。これが濃厚なWM1Zと合わさることで、まるでホテルのラウンジでリラックスして聴いているようなというか、トコトンまったりとした暖かみのある音色が聴けます。例えばJazzのヴォーカルもの(Diana Krallとか)などは最高です。もしかしてfinalの中の人は、E3000を作る際に、WM1Zも音決めに使用されたのではないか?と疑いたくなります。リスニング専用機として、このまろやかな音は(このイヤホンにとって)完璧に近い表現かと思います。

となると同社のE5000はどうなのか。合わせていませんが同系統のイヤホンです。こちらはリケーブル可能で、より出力の高いバランス接続が可能なため、E3000と同じようにWM1Zには異様に合う可能性があるかもしれません。今度バランスケーブルと合わせ試聴してみたいなと思います。

T8iE(16Ω/109dB) ★★★★(シングルエンドは★★★)
初代ですが、今はバランス接続メイン。T8IEは本来サブベース域が深く、そこが何とも言えない魅力を持つIEMですが、バランス接続ではまるでヘッドホンのように広い音場が形成されます。若干すっきり感がある音質ですが、かつてのハイエンド同士の組み合わせというのはやはり伊達ではありません。

普段このような音を聴きなれている方は、よく理解できるかと思いますが、いわゆる「ハイエンド領域」みたいな世界はあります。その場とは明らかに空気感が変わるような、無音の中から目の前にパっと音が表れるような感覚です。こればかりは言葉ではなく、実際に聴かないと理解できないのですが、1ZとこのIEMの組み合わせが、特別で別格なモノだということは言えるかと思います。相性がイイなんてものではありません。これこそ手持ちではベストで、バッチリ最高の組み合わせです。

但し、ちょっとだけなのですが、音が良すぎて?そこに違和感を感じてしまいます。シングルエンド接続であれば、その旨味(ちょっとした雑味)が充分に出て、低い帯域が層となり、濃厚極まりなく独特ともいえる世界観です。バランス接続に繋ぎ変えると、低域については若干ですがすっきり。その分だけ全体の見晴らしが向上し、帯域の繋がり具合というか、全域に渡って明瞭な音が出てきます。据え置きは大したスピーカーは使用していませんのであれですが、ハイエンド特有の空気が変わるような音。あの感覚がこんな小さなDAPから感じ取れるというのは凄いことかと思います。

但しインピーダンスと感度の問題により、WM1Zのシングルエンド側では、本当にほんのわずかなのですがホワイトノイズが感じられます(聴き始めるとほとんど気にならないレベルです)。駆動力については、バランス接続側はパワーがあるので、ローゲインで充分なのですが、ハイゲインにすると個人的な好みでは更に良い感じになります。ポタアンあるあるなのですが、ゲインを上げるとどうしても音が荒くなる傾向はあります。しかしWM1はデジアンゆえ?意外なのですが、ゲインにより音が荒くなるということはありません。

デメリットとしては当然ですが、ボリュームが上げられなくなってしまいます。WM1ZはMAX120メモリーですが、バランス接続だと上げても30くらいまでです。ですがメリットとして、トルクの違いが如実に出てきます。出音全体がグッと太くなり、例えるならば一筆書きで一気に書き上げたような勢いが出てきて、音の鮮度が全然違います。T8iEのトルクフル極まりないこの独特な音は、実に魅力的です。

同じ1DDであるP1と比較した場合、基本的な音色の違い(P1は暖色系でT8iEは変な日本語ですが寒色寄りのニュートラルです)により、使い分けが可能です。P1はどちらかというと唄モノ系中心。T8IEはどちらかというと生楽器や打ち込み系中心。概ねの傾向だけですが、そのような使い方が合っているかと思います。

※ ※ ※


WM1Zは一世代前のフラグシップ。現行の1ZM2は全ての面において上の機種ですが、音作りの方向だけは、若干ですが違うような気がします。1ZM2の音についてはまだ試聴レベルですが、例えるならば1Zの音をベースとして、そこに1Aの少しクールな透明感みたいなものまでオンされたような、壮大な空間を音で満たすような、そんなレベルに達していると思いました。

対してWM1Zは、音の空間は明らかにM2より狭いものの、逆にその分だけ?濃厚さが増しており、聴く人によってはどちらが良いか分かれるような気がします。そのような意味では、こと音質面だけのことでいえば、余韻が長めの傾向がありますのでロックなどは合わない音源も出てきますが、この個性的な音は唯一無二。旧機種とはいえWM1Zはまだまだ捨てたものではありません。

今や新世代のDAPは数限りなく出ていますが、このような特徴のある音を出す機種は珍しく、なかなかありそうでない類かと思います。とはいえWM1Zがオールマイティに使えるか?という点では、正直癖が強いので難しいのかなと思います。しかしながら音源、録音、合わせるイヤホン等がバチっとハマった場合は、とんでもない音が出てきますので、まだまだ第一線で評価できる一台。最近は中古で(以前よりは)安価で入手できますので、気になる方はぜひ一度試聴してもらいたいなと思います。

# by olskooljam | 2024-09-19 20:58 | Audio

Maxx2times

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Have A Good Time (2022)
https://youtu.be/D8oPkNrv4NE?si=YmK03dEl0NTLPnzC

久々の更新。インディモノですが、最近これだけ感銘を受けたシンガーはちょっといませんので、取り上げてみます。

Maxx2times。(おそらく)本名はMalcolm Simpson。どういう経歴か全く不明の唄い手で、Web上で調べても一切情報が出てこないのです。ソロでは現在までに、上記のデビューシングル?を含め、計3曲がリリースされているようです。この曲はチタリン臭が漂う、いわゆるステッパーズ系に属するミディアム・チューン。よく出来てはいますが、唄もメロディも正直特に大きな特徴まではなく、スルーされてしまっても仕方がない仕上がりの一曲かと思います。
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Round 2 (2022)
https://youtu.be/JbxxrmT2JKo?si=xltTiGLXMkkzZee2

2ndシングル。こちらはちょっと垢ぬけた感じの一曲で、アーバンR&B仕様のかなりイイ曲。少し鼻にかかりそして抜けていく、Malcolmの唄声の魅力が伝わってきます。ああこれはちょっとイイ唄い手だな..という印象。好みです。
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Prove My Love (2023)
https://youtu.be/AnkxiNwfB4g?si=-0ZmZMoCfPhajdTJ

そしてこれです。今のところ最新の一曲となるのがこのスロウ・チューン。初めて知ったのが、Xで仲良くさせていただいているyours trulyさん(@yourstruly9392)のたった一回の呟きからでしたが、もう驚きの一言。え、まだこんなオーセンティックで味わい深く、そして一緒に泣いてくれるようなソウル・シンガーがいるんだ..というその事実。それにむちゃくちゃ感動しました。メロ、アレンジ、控えめなコーラス、そして素晴らしく張りのある艶ヴォイスと唄ゴコロ。特に後半、

No I Can't, No I Can't, No I Can't Lose You, No No No No..

という、アドリブで何度もリフレインしまくるところ。まるで感情が溢れてこちらにこぼれ落ちてくるかのよう!ゴス的な煽りに煽る感じが真に堪りません。私も長くマイナーソウルを聴いてきていますが、この曲に関しては言うことなし。唄モノでは今年一番感動した一曲であり、素直に100点満点をあげたくなります。yours trulyさんサイコー。


※ ※ ※


そんな凄腕のMaxx2timesですが、あまりに好きなタイプですので、しつこく調べてみました。どうやらこのグループと関係しているようです。
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サウス・カロライナ州で活動するThe Rising Stars Of Eastover。地元の地域密着型ゴスペル・グループのようですが、グループ自体がSoul StirrersやTempsのように、相当古くから存在。歴代メンバーというか、メンバーも結構流動的?な感じで、アルバムも何枚か出ているようです(恥ずかしながら私は正直未聴のグループです、ごめんなさい!)

それでこのグループの上げているYouTubeの映像なのですが、例えば


大ベテランらしきバリトンリードの方から、途中でマイクリレーされる、この小柄で華奢な印象の若者。この声、このゴス特有の煽りの上手さ。そしてまるであのGlenn Jonesのように、ホールに響く地声の良さと喉の強さ。これは..

この人物こそ、間違いなくMaxx2timesこと、Malcolm Simpsonその人でしょう。映像の最後辺りでは、大ベテランのメンバーに、ジュニア!と声を掛けられていることから、もしかしたらメンバー誰かのご子息?か親族なのかも知れません。他の映像では、キーボードを弾きながら唄っていることから、現在は正式なメンバーか、ソロ活動の合間に参加するパーマネントなメンバーの一人なのでしょう。

Malcomは結局今のところは、教会とそして世俗音楽という、音楽界の二刀流なのかもしれませんね。個人的にはこれだけの唄い手を、このまま知る人ぞ知る..というような位置に置いておくのは、ちょっと勿体ないくらいだなと感じます。良い環境、良いマテリアル、そして良いスタジオ。良いミュージシャン達と時間をかけて、セキュラーの本気の一枚というのを作らせてあげたいです。

今業界では、ソウル好きのSnoop Doggが、October Londonという、まるでMarvinの生き写しのようなシンガーをバックアップしています。確かにOctoberも相当ですが、Octoberに匹敵する才能を感じさせるこのMaxx2timesと名乗る若者。いつか大きく花が開くことを願って。


※エキサイトブログではYouTubeリンクは一つしか貼ることができないようです。宜しければ曲はアドレスをコピペしてお聴きくださいませ。お手数かけてすいません。

# by olskooljam | 2023-11-23 17:02 | Indie Soul