人気ブログランキング | 話題のタグを見る

TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について

TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_14323756.jpg
以前も一度取り上げましたが、Analog Squared Paperさん(通称:A2Pさん)トコのポータブルヘッドホンアンプTR17hp。今回大幅なアップデートがありましたので、簡易ですが再レビューさせていただこうと思います。

先々月ですが、名古屋でポータブルオーディオオフ会(NPAO)が開催されまして、私も少しの時間ですが、参加ができました。NPAOは東海地区を中心とした、ポータブルオーディオ好きの有志の皆さんにより、企画されているイベントの一つで、私は二回目の参加です。前回もそうでしたが、今回メーカーの方が多く参加されており、制作秘話などのお話をお聞きするだけでも楽しいイベントでしたが、そこにA2Pさんもブースを出されていました。17hpは入手してから一年近くですが、そのアップデート情報については、そこまで多くのことは分かっておりませんでした。そこでまたお会いした時にでも色々お聞きできればな~と考えていたので、NPAOは大変良い機会となりました(運営の皆様リスペクト!感謝です)。

まず今回の変更点は2点とのことでした。一つ目ですが、出力に係る低ノイズ化についてです。私が購入した一年程前のTR17hpは、音自体はバツグンに良いものの、特にIEMを繋いだ時などに、バックグラウンドでサーというホワイトノイズが感じられました。高インピーダンスのヘッドホン(例えばHD 650)では全く気にならないのですが、17hpはその高出力ゆえに、わずかに聞こえてくる残留ノイズが、弱点とはいえないものの、IEM使いのリスナーには少しだけ気になる部分ではありました。

それともう1点は17hpのBT化(パネル丸ごと交換によるBT専用パネル化)についてです。こちらは以前から取り組まれていたとのことで、実際に販売もされていたので、気になっていたオプションの一つです。ただ以前試聴した際(半年ほど前でしょうか)は、まだ有線との小さくはない差が感じられましたので、見送りしていた機能でした(今回はそのヴァージョンアップ版)。

そこでNPAOにて実際に試聴しまして、どちらも効果的だと判断しましたので、その場でA2Pさんに、後日換装ならびに調整を依頼することをお伝えしたというのが経緯です。しかしこういう痒い所に手が届く部分。ユーザーファーストというか、A2Pさんの顧客を大事にするという対応が、とても誠実で素晴らしいなと思う部分ですね。小回りという部分は、ホント出来そうでなかなかできないことかと思います。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_16035159.jpg
そして後日正式にご依頼。2点共に調整されて仕上がってきたものがコチラです。見た目的には、上部のパネルがBT専用のモノに換装されており、本体色(艶消しシルバー)といい具合にマッチングしています。重量感については、オリジナル17hpとさほど大きく変わっていない印象です。それとBTパネルには、A2PさんのFOXイラストが入っていました。あまり目立たないようなというか、控えめな位置にさりげなく、といったところがいかにもA2Pさんのお人柄らしくて、とっても素敵で気に入りました。

まず今回の低ノイズ化について、変更調整された肝となる箇所は、初段の電源をツェナダイオード化するということだったそうです。実際に現在入手できる現行品については、既に対策済みのものが流通しているそうですが、私のものはまだでした。その為、IEMを繋いだ時などの(わずかな)ホワイトノイズ。本当にわずかなのですが、これがどうしても鑑賞を妨げるとまではいきませんが、気になっていた部分ではありました。ただ気になるのは、そこを対策すると、逆に音ヤセするのではないか?という懸念。オーディオあるあるですが、そこはちょっと注視していました。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_13191321.jpg
まずは手持ちのHD650を繋いでみました。ノイズ対策前であっても、元々HD650ではノイズレスではありましたが、更に背景が黒くなった印象です。私の耳では全くの無音状態になりました。音楽が漆黒の無音から立ち上がる様。これが息をのむように素晴らしく、その世界に入り込んでしまいます。やはり背景が黒いとその分だけ、余計に音楽がよく聴こえてくるように感じます。今度はIEMですが、こちらも手持ちの機種(Pinnacle P1やT8iEなど)を繋いでみましたが、明らかにホワイトノイズが(結構ごっそりと)減っています。

ただ特別に高感度のIEM(手持ちでいうとWestoneのUm Pro30:何と124dB)を繋ぐと、背景にまだわずかにサー音が聞こえますが、それは他の高出力ポタアンでも同様ですので、そこまで大きな問題ではありません。良質なT型インピーダンスプラグなどを組み合わせることで、充分17hpの良さを堪能できます。ちょい懸念していた音ヤセみたいな感じも皆無です。総じて大出力と低ノイズ化を同居させた手腕はさすがで、この改良は見事としかいいようがありません。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_16035739.jpg
次にBTの機能について。BT初期型は昨年だったかな?発売前のプロトタイプを聞かせていただいたことがあります。その時は確かに便利なものの、音質的にはまだ有線との差が感じられて、そこまで魅力的なプロダクトとは映りませんでした。ところが今回お聞きすると「今回は新ヴァージョンです。DACについてはシーラスロジックを採用しました。音質も向上していると思います。またBTも特別に電波ノイズが入りにくい措置をしてあります。」とのこと。そこで試聴したところ、一発で前回との違いが分かり、機能も問題ありません。iPhone側のBTをオンにしてから、17hpの天面にある小さなボタンを長押しするだけです。一発で認識しましたし、艶消しブラックのFOXパネルも見た目サイコーです。

実際に導入後何回も聴きましたが、比べれば確かに有線との差はあるものの、普通のAACのはずですが、圧縮感みたいなものが感じられず、かなり良好な出音です。音の削られ感がありません。これは単体でサブスクなどのリスニングであれば、充分楽しめる仕様だなと思いました。良好というか、有線同様の音の良さと、聴き心地の良さです。これでLDAC対応になったら、もしかしてもう線なんていらないかも?それくらい良い仕上がりだと思いました。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_21333178.jpg
Branford Marsalisの1987年のアルバム「Renaissance」を合わせてみました。ソウルもそうといえばそうなのですが、この時期のスタジオ録音は、音のバランスがどういう訳か高音寄りです。根幹となる大切な中低域が薄くて、これでは音楽の本質を見極めるのが難しいとまで思うほどですが、この作品もまた同様です。全体に軽いイメージです。しかしラストに収められたカヴァーSt. Thomas。これだけはちょっと趣向が違っていて、物凄くライブ感のある一発録り。オーバーダブみたいなものは無しです。この曲は17hpのSNがよく背景が静かながらも、出てほしいところはしっかりと出るという部分がぴったりマッチしていて、何度もリピートしてしまいます。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_21362497.jpg
80年代繋がり?で御大Ennio Morriconeの名盤「Once Upon A Time In America」も聴いてみました。この映画自体、私世代ではNo.1に選出されることが多い、文句なしといって良い一枚ですが、17hpのスケール感はこういうクラシックこそで本領発揮しますね。鳴らしにくいHD650を、ここまで優雅に鳴らすポタアンが存在するというのが驚きです。17hpを入手されたらぜひ聴いていただきたい一枚ですね。

あとは写っていますように、今回17hp専用の革ケースも導入しました。2種あったのですがプレーンを選択。厚みのある本革の完全に手作り品です。シワや傷の感じがとても自然で、味わい深いです。やはり専用品は違いますね。これで外出の際も気兼ねなく持ち出せるようになりましたので、専門店の視聴の時や、ポタフェスの際などにも、17hpを持っていきたいなと思います。総じて今回の2つのアップデート(と専用革ケース)は、17hpオーナーとしての所有満足度が上がり、更なる愛着が湧きました。

ポータブルオーディオについては、ここ10~15年ほどの間に、あっという間に世界的なブームとなっています。携帯電話がこれだけ発展したことにより、いつでもどこでもサブスクで、好きな音楽が好きなだけ楽しめるようになったことが、要因の一つだと思いますが、この現象はおそらく当分続くんだろうなと思います。

そしてポータブルオーディオでは、ここ日本だけではなく、海外も含めまして、大変多くのガレージメーカーが存在します。そして日本と中国と韓国は勿論のこと、香港や台湾にも多くのメーカーがあります。A2Pさんについては完全日本のメーカーですが、その製品群の素晴らしさに比して、知名度という点では正直あまりありません(あまりないというか、最初からそこまで大きく展開される気がそもそもないといいますか..笑)。ひたすらに質実剛健なスタンスで、誠実に良いものだけを、分かる顧客の皆さんだけに届けていくという、そんな感じのメーカーさんです。
TR-17hpのアップデートとBTパネル実装化について_d0056703_16040402.jpg
また一つ一つが完全手作りです。そのため納期にはそれ相応の時間を要します。また仕上がりについても、今回のように常に最新のアイデアが反映されたり、組み込まれたりしていますので、同じ製品であっても、納期のタイミングによっては、採用されるパーツが違ったり、細かい部分で改良されていたりします。その辺りがいかにも手作りたる所以な訳ですが、そこも含めまして、拘りのオーディオファイルの方にはもう堪らない?訳なのでしょうね(なのです)。

ですので、その辺りをしっかり理解しておかないと、製品の良さは分かりづらいのかなと思います。こういうある意味ニッチな製品は、ポータブルオーディオの経験値が高くなってくると、その良さが身に沁みてよく分かるようになりますが、逆に経験がまだそこまでではない方は、まずは大手で評判の良い製品でも充分じゃないかなと思います。そして徐々に音や音の仕組みが分かってきて、ようやく初めてこのような手作り製品の、味わい深さみたいなものが堪能できるのかなと思います。

TR17hpが完成品になったことで、個人的に今ポタアンが飽和状態になってしまいました。お気に入りのものが増えすぎて、嬉しい悲鳴なのですが、こうなるとリプレイスしたかった単体DAP(NW-WM1Z)の後継機種が決まりません。今回17hpに良質なBT機能が追加されたことにより、単体で外へ持ち出しができるようになりましたので、そうなりますと単体DAPの利点というか、メリットが薄れてしまいます。

実際これはメーカーの方からも、近い話をお聞きしたことがあるのですが、DAPはなにしろあのサイズに、DACもバランス端子もアナログアンプもBT機能も、その全てを詰め込む必要性があるゆえ、単純に音質だけでいえば、純粋なポタアンとは、そもそも比較すべき対象ではないということです。音質面と機能面の、そのどちらをも高レベルで同居させたものが単体DAPであり、それゆえに高価格になってしまいます。そうなりますと17hpは、コーデック(SBC・AACの二つだけ)の問題はあるにせよ、単体で楽しめるBTアンプに改良されたことで、こと音質だけであれば(トランスポーターを上手く活用できればというエクスキューズが付きますが)単体DAPのメリットを上回る可能性すら秘めています。実際手持ちのWM1Zであっても、もちろんハイエンド級の良い音ではあるものの、出力面や音の厚みみたいな部分は、明確な弱点だと感じています。そのため良質なアナアン等と比較してしまうと、その部分においては、不足感を感じてしまいます。

しかしここまで良い仕上がりなのは、改めて驚きです。日々の生活の中で、ちょっといい音で音楽を聴きたいなと思う場面で、17hpは対象外であったのですが、BTパネルが実装されたことにより、外でも中でも気軽に使えるようになりました。A2Pさんは、知名度という点においては正直そこまでですが、確かなその技術力をベースした音世界は、特別なものと言い切って良いかと思います。個人的にはコアな方だけでなく、マスに対してもっとこの素晴らしさが知られてほしいなとも思いますが、そうなると逆に、A2Pさん自身の(製造や開発等の)ペースが狂うということも予想されますので、微妙というか難しいところなのかもです?

by olskooljam | 2026-04-03 10:41 | Audio
<< 進化すると同時に失われていく芸... >>