![]() 何年か前ですが、トムクルーズが24fpsの重要性について発言されたことがありましたよね。いわくTVのfps補完技術は、映画を観るのには適していないので、オフにして観てくださいみたいな。これは私も映画好きとしてずっと気にしていたことです。最近のモニターは補完技術が凄くて、ヌルヌル滑らかに動くため、映画を再生すると逆に違和感が出るんですよね。特にトムの映画なんかは、アクションシーンが多いので、そのようなモニターで観ると余計に違和感があります。 ではなぜ秒間60コマや120コマじゃなく、24コマなのか。色々な文献や記事で書かれていることですが、当初の映画は秒間16コマ撮影だったそうです。それではさすがにちらつきが大きいということで、次に24コマ撮影が開発され、ここでようやくちらつきを感じることが少なく、見やすいという評価が確立されたようです。これは人間の目と関係があるようで、少しコマ落ちするくらいの、あまり滑らかではない24コマの動きが、あの映画特有のモーションを生み出すというのはあるのかなと思います。逆に60コマまで増やすと、今度は(特に人物などの)動きが滑らかになりすぎてしまい、観ていてどういう訳か違和感を感じてしまいます(ただアニメやゲームなどでは、フレーム数が多いほうが良いと思います)。要するにコマ落ちが気にならず、かといって滑らかすぎずという、絶妙なコマ数なのでしょうね。 そこでこの黄金比の24コマという世界観について、それではどうしてどうしてこんなに観ていて心地良いのか、あるいはその世界に没頭しちゃうのかな?と考えることがあります。映画は長く観ているので、こちらが慣れていることも勿論理由の一つですが、もう少し何か理由がありそうな気もします。 ![]() ちょっとズレるのですが、それを音楽の世界におきかえて考えてみます。映画の黄金比24フレームというのは、ジャズでいえば50年代のモダンジャズ。ソウルでいえば60年代のディープソウルと、60年代後半から70年代前半にかけてのファンク。そしてヒップホップで考えれば、80年代後半から90年代中頃にかけての、いわゆるゴールデンエラと言われる、サンプリング主体で作られたブーンバップの全盛期。もしかして24fpsの黄金比というのは、これらに値するんじゃないかな?と思ってしまいます。 どのジャンルについても、今の技術からみると足りない部分が多く、今では古くなった音楽。ですが、それぞれその時代のその分野における先駆者たちが、皆が苦労し切磋琢磨して完成させた、偉大なフォーマット(ジャンル)でもあります。これらはその全てが24コマ同様の黄金比みたいなもので、今現在でも人を魅了してやみません。それぞれが特殊なといいますか、今でもジャンルごとの愛好家が増え続けていますし、どのジャンルを掘っても先人の凄さというか、その豊かなイマジネーションに圧倒されます。 例えばですが、今現在のR&Bや特にHIP-HOPは、世界中にも多くのファンがいます。きらびやかで派手な最新の電子音などがビンビン鳴り響き、特に後者なんかは世相などをリリック面でも強く反映させますので、世界的に人気が出るのは当然なのかなと思います。 そしてその中にいるライトユーザー方の中で、何割かの方がヘビーユーザーに変化していきます。そうなってくると、今度はそのルーツを辿る旅路が始まる訳です。そしてそれぞれのフリークが辿りつく境地が、MODERN JAZZ / DEEP SOUL / DEEP FUNK / BOOM BAP / ROOTS ROCK REGGAEなどであるということです。各々とてつもなく極められた様式美みたいなものがある為、もし今技術的に再現できたとしても、込められた熱量やその時代ならではアイデア、録音技術、機材の違い、アーティスト自体の時代ならではのスタイル。それらが強く盛り込まれており、どうしても同じものが再現できません。良い悪いではなくて、結局似て非なるものができあがってしまいます。SOULでも90年代に、(評判の悪いワードですが)ネオソウルが揺り戻しのように起きました。あれなどまさにあの時代の熱量と、そして魂を呼び戻すような再ブームでした。 ![]() それぞれが完成され評価の定まった音楽であるがゆえ、没入感がハンパじゃありません。歴史を知れば知るほど、過去にこんな凄い音楽と音楽家が存在していたのか!と驚く場面もあるでしょう。 そしてもう一つ見逃せないのが、リアタイ(リアルタイム)ということです。上記の定着したフォーマットの中で、今の現役世代の方で、リアルタイムでその過程というか、その凄さを実際に身をもって体験しているのは、実は唯一ヒップホップだけなんじゃないのかなということなのです。1960年前後のモダンジャズをほぼリアタイで聴いていた方は、どんなに若くても現在80代以上。1970年前後のソウル、ファンクですと70代以上。これがヒップホップの黄金期となると、何とまだ40代から50代くらいの、まだまだ(けして若くはないですが..笑)まだ現役世代の方が、その一番熱かった凄かった時代を、全身に浴びるように体験しているという訳なのです。 このことは地味ですが実に凄いことです。例えばですが、雑誌やあるいはXでもいいですが、50年代などのジャズジャイアントについて、もう異常に詳しく知っているようなお方がたくさんおられます。そのような方は、実際80歳以上の高齢の方である訳はありません。皆さんそこに深い愛情や想いをそこに馳せながら、追体験にて語っておられます。しかしながらそれであれば、これから育ってくる若い聴き手の方でも、(もちろんいい意味で)現れてくる可能性はある訳です。いやむしろサブスクで旧譜も新譜も、ほぼほぼその全てが聴ける時代ですので、今後更に詳しい(いわゆる博士ちゃんみたいな)専門家が現れてくるのは、間違いないなと思っています。これからも若い聴き手が育つ土壌があるというのは、実に素晴らしいことなんじゃないかなと思います。 ![]() ところがヒップホップは違うんですよね。今のケンドリックやドレイク、あるいはKOHさんなどを聴いて、ヒップホップに目覚めた聴き手の方が、目にするゴールデンエラの話や記事については、その書き手の方は、(勿論全員の方がそうではありませんが)実際にその時代を過ごしてきた、完全なるリアタイの生き証人なのです。これは地味なのですが、やはりとんでもなく物凄いことです。何しろまだまだ目も耳も記憶もそこまで劣化しておらず?現在のシーンは当然のこと、過去一体どうやってここまでの、世界的な拡がりになったのかを、自分の目と耳で事細かく知っているのです。 例えばですがジュースクルーがどれだけ勢いがあったのかとか、マーリーマールがあの空気感の中で、どうやって復活したのかとか、PEやULTRAの関係性って実際どうだったのかとか、BDKってあんなに凄いのに、どうして失速したのかとか、あるいは2PACがデスロウと契約する前どうだったのかとか、Main SourceやOKが出てきた時のシーンって、一体どういう状況だったのか、NASやビギーがどういうキャリアを積んでデビューしてきたのかとか。悲劇的な結末を迎えた東西抗争って一体何だったのか、その当時の実際の雰囲気や、あるいはシーンの反応はどうだったのか等々。 そこら辺りをリアルタイムに体験し過ごしてきた方は、その説得力というか、皆さんヒップホップに関する知識量と、そして養ってきた耳の良さがもうハンパじゃありません(特にDJの方の皆さんなんかはマジで異常な耳の良さです)。こういう方のポストは見ていてすぐ分かります。元ネタに対するリスペクトについても、モダンジャズを愛する方などと同様に、深い愛情とそしてそこに、実際のリアタイでみてきた、本当のことを交えて語られるので、圧倒的でかつ説得力が違います。 モダンジャズがコアなジャズフリークの方に、今でもあの時代こそ本物と言われるように、ヒップホップも(少なくとも半ばくらいまでの)90年代は、メインストリームの一つがあのブーンバップであったという訳で、同様にコアなヘッズの皆さんには、あれこそが本物の時代と言われるに相応しいです。音もその表現も、今のシーンがどうこうということではなく、今とは完全に乖離していますが、あの時代の凄さとそして残された音源の凄さ。荒々しい打ち込みと選りすぐられたサンプリング。MCの卓越したライミングと、生活に密着し、世相を鋭く切り取るリリックの凄さ。これらが合わさり、まさに芸術的なまでに磨かれ昇華された音楽は、これからも時代を超えて語られ、そして聴かれていくのでしょう。 現在の音楽シーンについては、各ジャンルが成長し、そしてそれぞれの成熟した姿が聴けるのかと思います。しかしながら成熟と同時に、何か大切なものが失われていくような気がしないではないです。何もないところから、あるいは逆境から這い上がるために、音楽で生計を立てる。音楽そのものに強いメッセージを込める。そのようなバックグラウンドが感じられる音楽は、どのジャンルであっても何か強いんですよね。聴き手も強く感化されてしまいます。 私は日本に住んでおり、アメリカの社会システムの中で生活している訳ではないので、現地のことは深くは分かりません。ですので見方が違いますが、それでも社会情勢や音楽が、大きく変わってきていることは分かります。80年代にソウルを漁っていた時、60年代や70年代のそれとは全然違うことに、古くからのソウルファンは異議を唱える方がいました。今私がそれを実感しているというような感覚があります。 黄金期となれば、それはやはりそれぞれ過去のものが多いです。過去の膨大なカタログを調べるのは良いことですし、最高の趣味の一つかと思いますので、私もこれからも楽しみながら、もう少し?まだまだ?掘っていきたいなと思います。今現在の音楽についても、いずれ古くなって聴こえてくる時代が必ずやってきますが、ではそれらが50年代のモダンジャズや、あるいは90年代のヒップホップのように、黄金期と認定されるかといえば、それはちょっと違うような気がします。 少し前にXでみたのですが、おそらく90年代に撮影されたDavid Bowieのインタビューで、「もうこれからは時代を代表するスーパースターは出てこないと思う」と予想されていました。確かにその通りで、マイケルやプリンスのような、ジャンルを超越する圧倒的なスターは出てきていません。ディアンジェロは凄いですが、良い意味でブラックコミュニティーからは飛び出さないスターでした。現役のケンドリックの影響力は、マジでハンパないなと思いますが、では(黄金期を通過してきた)オールドヘッズまでもが、マイルスやプリンスのように、皆さん夢中になって追っかけているのかなといえば、それはまた何かちょっとだけ違うような気がします。そのような皆さんが選択してスピンするのは、そういうものだけじゃないんだよなーと感じています。 ※ ※ ※ まとめ はい、まとまっていません笑。ですがずっと書きかけのままであったこのエントリーは、今日どうしても上げないといけないなと、急に思い立ってしまいました。といいますのも、昨夜偶然とまではいいませんが、(日本を含む)90sヒップホップの中心にいたとんでもない方と、少しだけですがお話させていただける、貴重な機会がありました。その中で感じたのは、50年を超えてきた歴史の中で、黎明期を経て辿り着いた、まるで頂のような90sヒップホップの世界。(クリアランスの問題も含めて)今更戻れないのと同時に、メインストリームまで一介のシーンを持ち上げようとする、その若さと勢い。そして何より情熱のレベルが、芸術的なまでに桁違いであったんだなあということです。お話の中でそれを昨夜は強く強く感じ取りました。 モダンジャズもディープソウルも、そして件のヒップホップも、もうあの何もないようなところから、芸術を生み出すという、熱さと情熱みたいなものは、(時代背景も大きく違いますので)もしかして蘇ってこないのかもしれません。しかしながら、90年代は掘っても掘っても、お宝がザクザクと出てきます。そこを追及する時間は険しくもまた楽しくもある時間なんですよね。 もうゴールデンエラ通過世代は、今や老害一歩手前な(いや老害そのもの?)世代かもですが、新世代のラッパーやシンガー、あるいはビートメイカーが、とんでもなくフレッシュで、魅力ある新しい世代の音楽を生み出してくれることを期待したいです。そして古い世代がヒップホップ老人ホーム!で、ガンガン頭を揺らすような、揺り戻しを待ちたいなと思います笑。
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| 2026-03-21 12:32
| Hip-Hop
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