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Analog Squared Paper TR-17hp

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久々にオーディオの話題でエントリーです。最近入手したポータブルアンプなのですが、とても印象的な仕上がりでしたので、取り上げてみたいと思います。

三重県の鈴鹿市にあるAnalog Squared Paper(通称A2Pさん)さんのフルディスクリートトランジスタのヘッドホンアンプTR-17hp。こちらは昨年正式にラインナップに加わったポータブルアンプ(ポタアン)のようです。同社には元々TR-07hpという機種があり、オーディオファイルの方向けの知る人ぞ知る製品ですが、根強い人気を博していたようです。私はかれこれ5年以上前にその存在を知って以来、ずっと気になるWANT機器の一つでした。しかし当然ですが、直接触ったり音を聴いたりという機会などありません。ウェブ上で情報をみて、ただただ憧れていた商品の一つでした。

個人的には2022年になってからXを開始したことで、X上にある新製品情報をみることができるようになりました。そこで07hpはすでに製造中止になっており、17hpはそれを踏まえての、後継機種として開発中だということが分かったのです。元々07hpは、古くからのオーディオファイルの方からの評価が高く、中古で市場に出てきたとしても一瞬で売り切れてしまうような状況でした。しかしそれを中止して、後継を出すということは、A2Pさんとしても力の入れ具合が違うんだろうなと想像していました。ただそれが一体いつになるのかは、まだその時点では分かっておりませんでした。

ところが2023年になって状況が変わります。REB-FESという体験型のイベントが全国規模で開催され、東海地方では8月に名古屋で開催が決まったのです。そこに何とA2Pさんも参加されると聞いて、これは同社の製品が試聴できる大チャンス!ということで、勇んで参加させていただきました。

振り返りますとこのイベント自体、とても落ち着いた品の良い試聴会でした。ブースの中の方は勿論ですが、来場者の方も変なテンションの方はおらず、A2Pさんのブースについても、じっくりとお話を聞きながら、ゆったりと製品を聴くことができましたので、良い印象しかありません。ポタフェスも良いですが、それよりは小規模で楽しめますので、できればまた再開してもらいたいなと考えています。

ただ、そのイベントでは残念ながら07hpや(その時点では新作予定であった)17hpは用意がされておらず、試聴はできませんでした(まだ17hpの説明書だけの状況)。その代わりに試聴させていただけたのが、TU-05mk2。ポータブルというには、ちょっと巨大すぎる真空管アンプ。あまりの大きさに、そこまで(ポータブルとしての運用という意味で)興味は持てなかったというのが本音ですが、これにガツン!と衝撃を受けてしまったのです。

送り出しには、手持ちのNW-WM1Zを使用したのですが、出てくる音の純度。これがもうとんでもなかったのです。真空管ってこういう音だよな、と思わせるには充分と言いますか、自然な立体感と、また滴るように瑞々しい音なのです。中低域の安定感についても、据え置き級。いや完全に据え置きから出てくるレベルの音。びっくりしてえ?なんなのこれって笑。思わず口が開いてしまったほどです。

まとめますと、要は音が極めて自然で生々しいのです。これをポータブルで組み上げちゃうA2Pさんて、いや一体何て凄いメーカーさんなんだ!と感激してしまいました。おそらくポータブル専門メーカーの方が聞いても驚くほどの高音質で高品質。要するにとんでもない訳です。A2Pさんってちょっと別格だよなと感じるには充分であり、その場で17hp情報について色々聞いてしまいました。

興味深かったのが、その時点ではまだ決まっていなかった出力端子についてでした。前機種で採用されていた3.5端子(シングルエンド)にするか、それとも4.4端子(GND分離)にするのか、まだ少しだけ迷われているとのこと。A2Pさんにお聞きしたところ、まずそもそも入力側をシングルエンドにされた経緯についてですが、素子数が少なく、駆動力が上がるのでとのこと。BTL(広義のバランス)については、パワーそのものは出るものの、半導体を2倍通るのでダレ(※厳密には負荷からみたアンプのインピーダンス)が大きいという、そのような側面もあるという訳らしいんですよね。個人的には4.4端子(GND分離)の純度の高いすっきりした音も魅力がありますが、やっぱり長く聴くとなると、ピラミッド型で安定した3.5端子(シングルエンド)。二者択一であれば、後者が良いですと伝えた記憶があります。

その後、紆余曲折ありまして、注文できたのは昨年後半ですが、A2Pさんはさすがに長期に渡り注文が続いているようで、実際入手できたのは今年の春になってからでした。
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筐体について
評判の良かった前作とほぼ同様のデザインのようです。無駄がなく、質実剛健。ミニマム的な美しさが感じられて、個人的には非常に好みです。表面についてはオプションを活用させていただきまして、シルバー基調のアルマイト加工としました。触ってみると特に質感が非常に高いです。上蓋については、私のモノはわがままを言って(オプションで)、サンドブラスト加工にしていただいているのと、ボリュームつまみも艶有にしてもらいました。ちょっと特殊な仕様ですが、ワンオフのこの1台だけという特別感が増して、愛着も湧くというものです。サイズについてはW60 H117 D23mm。重量は200g。片手で持てる程よいサイズであり、また重量感についても非常にしっくりときています。程よい重さです。それと地味に凄いお気に入りなのが、ボリュームつまみのトルク感。これが適度に重さを感じさせてバツグンに良いのですが、これは実際に触っていただかないと理解できません。ホント心地よく廻せます。
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また現在は不明ですが、私の注文時は標準のオプションで、アクリル製の上蓋が付いてきました。これを使用すると、試聴時に内部基盤の状態をみることができます。中身の基盤は一部空中配線になっており、見た目でも美しいですし、こういうちょっとした仕掛け、遊び心が楽しいですよね。それと内部には何とトロイダルコアトランスがドンと鎮座しています。このサイズのポタアンでは正直ちょっとありえません笑。このような拘りの仕様が、17hpのヤバさを象徴、助長しているのかなと思います。


出力・仕様他について
16Ωで800+800mWというちょっと驚きの高出力仕様。このサイズではありえない?くらいのハイスペックです。手持ちではHD650やPinnacle P1を組み合わせてみましたが、難なく余裕をもってドライブできました。その影響もあるのか、バッテリー駆動時間については、概ね6時間程度とのこと。こちらは筐体のサイズを考えれば、まずまずといったところでしょうか。普通にリスニングする分には、2日使用して1回充電というようなイメージでいけるかなという印象です。仕様についてはBTL出力も魅力的でしたが、最終的には結局シングルエンドへの変更をお願いしました。


音質について
いつものように?組み合わせるのは主に以下のような機器類です。

ヘッドホン・イヤホン
Sennheiser HD 650
Mee Audio Pinnacle P1
Beyerdynamic Astell&Kern AK T8iE(初代)
Klipsch Image X10 (MOD)
AFUL MagicOne etc.

DAP等
Sony NW-WM1Z
tueks BT-02 (MOD)
tukes BT-1/4”
Apple iPod CLASSIC
iFi xDSD Gryphon etc.

音源
ジャズを中心としたDSD・FLAC・ALAC・AAC(320)

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Earl Klugh - Solo Guitar (1989)

アール・クルーのこの盤は、余計な音が入っていません。唄やオーヴァーダブもなく、完全にアコギの一発録りみたいな作品です。そのため、純粋に弦楽器の魅力が堪能できます。それゆえ再生機器の持つ性能を試すにはピッタリの一枚。こちらをBT-02とHD650の組み合わせで聴いてみました。
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BT-02はオリジのエフェクト成分を完全オフに変更したものですが、素直な音質傾向となっておりクセがありません。程よい透明感もあり、単体でも充分なリスニングが楽しめる極上の一台です。650は知っての通り、元々が緩めの音質傾向のため、キレが悪いアンプとはあまり相性が良くありません。また感度はともかく300Ωというインピーダンスが鳴らせる敷居を高くしていますが、17hpはHD650を難なく駆動します。駆動するだけではなく、HD650本来の緩めで曖昧ともいえる音にプラスして、17hpが程よいキレ味と、少しだけ明るく立体的なプレゼンテーションが加わってくるような感じです。

ここで上流をWM1Zに変えてみると、グッと立体感というか、実体感みたいなものが増してきます。音を言葉で表現するのは難しいのですが、この組み合わせは更に好みでした。たったギター一本の作品なのに、奥行きと自然な余韻が感じられて素晴らしいです。いつまでも聴いていられるという感じ。単体BT-02においてはもう少し音が柔らかくなる感じです。ただ聴き始めるとそんな細かいことは忘れて、純粋に音楽に没頭してしまう。そのような没頭する音を、聴き手に伝えるギアとしての役割を全うするアンプという感じです。

上記のように17hpは、上流の影響を確実に伝えるという意味では、好みで音質傾向を変えることができるということですので、またそのような意味でも自由度って高いなと思います。もちろん17hp固有の音というものはありますが、変なクセは感じられません。以前も同様のことを書いた記憶がありますが、ポータブルアンプ(通称ポタアン)については、今まで数えきれないほど聴いていますが、そんな中で17hpは最初聴いた瞬間に「あー。ん?ちょっと待って。違う。あこれは音の深みが全然違う!ええ?」とそんな感じで驚くパターンです。
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比較対象として、ああこのポタアンに似ているなあとかいう機種はあまりありません。手持ちでは例えば(充分温まった時の)KATZE AXEL SP。こちらはレアな真空管アンプですが、しいて言うなら、無理やり似ているかなあというレベル。もちろん全然違うのですが、17hpは基本フルディスクリートのトランジスタアンプですのに、音色的にはどういう訳か、真空管のような倍音感や艶感を感じさせてくれるのです。MOS-FETが使用されているという部分も大きいのかもですが、その辺りのトロリとした味わいが、極めて自然に感じられます。具体的には、高域~中音域にかけての表現力。これが如実に他の(一般的な)ポタアンとの違いを生んでいます。生々しいまでの唄声や溜息等の質感。不要なエフェクト的な響きではなく、弦楽器類などのキュッキュという弾く音。そのような音色、響きがバツグンなのです。

また音の土台となる低域についても、安定感が感じられます。程よく引き締まっており、カチカチの筋肉質という訳ではないですが、まるでプロレスラーのように強くて、そして弾力性のある筋肉。例えが微妙ですが?そのような魅力ある低域が支えており、目を閉じ聴いていると、まるで据え置きSPのような印象を受けます。聴いていて、いい意味でほとんど違和感がありません。何というか、ピュアオーディオ的な自然の立体感が感じられ、極めて生っぽい音色なのです。


IEMとの相性について
ここはちょっとだけ個人的なお話というか、私自身の問題についてです。17HPはHD650やPinnacle P1のような、一般的なDAPやアンプではちょっと鳴らしにくいものを、しっかり駆動させる弊害?で、ノイズフロアについては若干高めな仕様のようです。高インピーダンスのHD650では、ホワイトノイズを感じませんが、P1やX10では挿した瞬間に(そこまで大きなレベルではありませんが)薄くですがはっきりと感じられます。気になって音楽を楽しめないというレベルではないものの、やはり無音から音楽が立ち上がってくる瞬間を味わいたいんですよね。そのような意味では、私のようなIEM派には、ノイズフロアが低いほうが勿論ベターな訳です。特に50Ω/96dBというスパルタンな仕様のP1で、ホワイトノイズが出るのは、ホント据え置き級な訳です。17hpはポータブルアンプではあまりない、凄まじい出力ということが分かります。

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そこで対策として、写真のようなアッテネータを導入してみました。こちらは高品質すぎるカスタマイズで有名なE4UAさんに無理を言って、ワンオフ品で作成いただいたものです。通常の(一般的に入手可能な)アッテネータ類では、どうしても音が籠る、音質が落ちる、大きく変化するというような弊害がありました。アッテネータは何種類かコレクションしているのですが、手持ちですと10PROに付属されていたものが実は一番音が良くて、今まではそれをメインで活用していました。音の良さというか、変化量の少なさという意味では、構造的にT型(並行)が一番良いというのが定評です。その為、構造的に変化が少ない並行式のT型で、そこに評価の高いパーツを組み合わせたアッテネータがもしあれば、17hpでもノイズレスでIEMが楽しめるんじゃないかなと考えました。

100Ωと56Ωと2種あるのですが、結果どちらも良好でした。抵抗用のパーツには、定評あるVishay/DALE CMF55を採用いただきましたが、勿論音質変化はあるのですが、基本的な音の傾向については変わらない感じです。DDに対して変化量が多いと言われる1BA方式のX10は、例えばハイ上がりになったりするなど、影響があるかなと思いましたが、そのような悪い変化は感じさせません。こちらも17hp同様で、めちゃくちゃお気に入りの逸品です。

こちらのアッテネータをX10と組み合わせた印象としては、X10本来の滑らかな中音域中心で優しい音色が、より助長されるような感じです。ホワイトノイズについては、元々が50Ωですので、56Ω追加でも充分という感じですが、100Ωであっても、17hpはパワフルですので全然普通に駆動してくれます。勿論どちらについても、ホワイトノイズは全くといって良いほど感じさせません。また変に歪みが大きく出るとかもなく、安心して使えます。こういうアイテムは、ノイズを下げるのと同時に、機器が本来持っている生き生きとした音の魅力、そのようなものまで一緒に消してしまうという面もあるのですが、このアッテネータに関してはその点でも問題ありません。17hpなど高出力のアンプにIEMを合せる場合は、汎用性もあり必須ともいえるアイテムとなっています。



※ ※ ※



まとめ
好みはありますが、17hpは(私が聴いてきたポータブルアンプの中では)間違いなく最高峰に位置するような、素晴らしい一台かなと思いました。据え置きでヘッドホンリスニングする際の、あの落ち着きリラックスした空間や時間。アンプがしっかりドライブできるからこそ実現する特別な世界です。あの世界感を、このサイズ感のポタアンで実現されたのは凄いの一言です。サイズ的な要素を加味すると、この大きさでこの音という意味では、本当比類がないというか、正直あまり思いつきません。例えばCayinさんのC9やLuxury & PrecisionさんのEA4とか、音も見た目の(良い意味で)お化けみたいなモノもありますが、どちらもサイズ的には大きめです。また音の方向性的にも個性的すぎる?ので、MOS-FETの特徴も生かされた、自然で色付けの少ない17hpとは、方向性が似ているようで、少し違うのかなという印象です。

確かにIEM使用時での、若干のホワイトノイズという部分はあるにせよ、ヘッドホン派には関係のない話ですし、こと音楽を楽しむという面においては、それはそこまで大きな問題ではありません。基本的に優れた音質が担保されている一台ですので、私のようにアッテネータを組み合わせるなどで、使い勝手や伸び代が、むしろ大きいのではという印象です。

17hpについては、音質的にはこの現ロットが最終決定版らしいのですが、なんでも今後はBT機能の追加や、IEM専用(!)のものなども検討されているとのこと。ますます楽しみな状況ですが、A2Pさんトコはバックオーダーが山積みのようですので、実現にはもう少し時間が必要かもしれません。今はまずは今あるこの素晴らしい17hpを何とどう組み合わせ、どう使っていくのか。ポータブルオーディオの世界は進化が止まらないので、まだまだ凄い製品が出てくるのかと思いますが、ここまで良質な音を聴かせてくれるのであれば、もう文句なしです。手持ちの機材や、あるいは市場で入手可能な製品も含め、じっくりと考えて組み合わせていきたいなと思います。

by olskooljam | 2025-07-18 10:41 | Audio
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