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マーヴィン・ゲイ (文藝別冊)

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今日は天気が不安定でしたが、そんな時に限って用事が多く?思った以上の疲労感が残った一日でした。そんな中でのわずかな時間でしたが、久しぶりに本屋へ行ったところ、この特集号を見つけて購入してしまいました。

よく職場の若い方と話をする時に、どんな音楽を聴くのですか?と聞かれることがあります。その時は迷わず、やはり「ソウル・ミュージックだよ」と言います。ところが今の若い方にとっては、既にソウル・ミュージック自体が一般的な固有名詞ではないようで、「ソウルって例えばどんな音楽なんですか?」と更に質問されてしまいます。

厳密な意味で言うと、R&B~ソウルとは歴史的に(Wiki的に)非常に細かくカテゴライズできるジャンル。ですが例えば現在広く使われている「R&B」などは、単なる「アール・アンド・ビー」というワードなだけで、本来の意味である「リズム・アンド・ブルーズ」のことを指すものではありません。この辺りはこの文化に精通していない方には大変に理解しがたく、また説明がしづらい部分です(説明が超長くなりますのでバッサリと割愛)。

R&BイコールSoul。これは広義ではけして間違いではありません。ですが現在のR&Bはソウルではありません。正確に言えばほとんど別種で似て非なるものです。

ソウルマニアが言う本物のソウル。それはSam Cooke系譜の流れを持つ、60年代のサザン~ディープ系のミュージシャンがずばりそのものだという気がします。Willie HightowerやSpencer Wiggins。あるいはO.V. Wright等、もう辛抱堪らないんですよね。

厳密に言えばモダン・ジャズ同様で、ソウルは70年代の(商業化が進みマシーン化した)ディスコが出現した時点で、既に死滅した文化なのです。その形骸化した残像みたいなものが、今様のR&Bなのだとも言えましょう。

しかしながらそれが良いことなのか悪いことなのか。あるいはこれが成熟した姿なのか。なれの果てなのか。このことは多くのソウルファンが、共通認識として悩み苦しむ問題でもあります。

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さて本題です。冒頭の特集雑誌ですが、まず表紙はあまりいただけませんね。ソウルファンの心を揺さぶる類ではありません。しかし問題は中身です。これは手応えがありました。

まず鈴木雅之さんの頁では、Marvinと関係ない話がめちゃくちゃ面白いです。とはいえ私なんかはほとんど知っている話ばかりでしたが、こうしてまとめてあると読みやすく、また時系列も正確になりましたので、そのような意味で保存版です。

ミュージシャンというと個人的な印象として、意外とマニアが少ないという勝手なイメージを持っています。ところが中には大滝詠一さんのように、超が付くほどのコレクターの方もみえます。鈴木雅之さんはシャネルズ時代から好きですが、ここまでマニアックな知識を有しているというのは、意外とマスには知られていないかと思います。

この本はまだ読了してはおりませんが、感心したのは長澤唯史さんが寄稿された頁。長澤さんは大学でポピュラー史を教えている方のようで、人種的な問題も交え、文化的な文脈の中にMarvinを捉えられており、読んでいてうんうんと納得してしまいました。読み応えタップリ。

私は今では「ソウルではどんなミュージシャンが好きなんですか?」と聞かれた場合、Bobby Womackなんですとは(本心では答えたいのですが)答えません。大好きなBobbyですと正直全く話が通じないからです。

そういう場合は「やはりMarvin Gayeとかですね~」と曖昧に答えるようにしています。それは勿論好きなこともありますし、Marvinがソウル・ミュージックの巨大なるアイコンであると同時に、アメリカのShowbizにおける伝説的なスーパースターでもあるからなのです。



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1984年4月1日。当時の私は既にソウル・ミュージックにドップリ浸かっており、Marvin Gayeではやはり"Sexual Healing"を聴いていました。あのなんともいえないリズムボックスの使い方。この人はいったい何て黒い音を作るんだ!と感動していた時期でした。

そんな中で飛び込んできたニュースを聞いて愕然。こんな悲劇的なことがスーパースターに起こるなんてと、ちょっと前に起きたJohn Lennon級の衝撃を受けたことを今でも覚えています。ラジオはもちろん新聞でも取り上げられましたし、結構な社会的ニュースでもありました。

結果的に遺作となった"Midnight Love"では、あのジャケットが好きです。肘をついてリラックスしたMarvinの表情は、何とも言えずアンニュイで怪しい感じ。レコ屋の壁に飾ってあるのを見る度、ソウルってカッコイイなといつも感じていました。

内容は今更ですが、"'Til Tomorrow"を頂点としたブラコンの見本市のような仕上がり。今の耳で聴いても独特すぎる世界観です。但しこれがソウルだとは一概には言えないのも確かなのですが、一方では唄っているのはMarvin Gaye。となればこれはブラコンでもあり、またソウル・ミュージックでもあると言える訳です。

この辺のニュアンスについては、矛盾しているようで実は矛盾していない部分です。言うなればソウルファンが語ることでのみ、特別な説得感が生まれてしまう魔訶不思議な部分です。

Marvin Gaye。何と悲しく感情を揺さぶってくる唄声なんでしょうか。よくサックスのようなと例えられますが、他の誰とも似ていない特別な世界観です。

そういえば事件が起きた翌日は、何とMarvinの46回目の誕生日。このような特集雑誌を読めば、どうしてもそんな悲劇的な事実を思い起こしてしまいます。生誕80周年記念ですか。もうこんな繊細で悲しいリフレインばかりを生み出す、ソウルのスーパースターなど二度と現れないでしょう。

私はといえば、既にMarvinよりも年を重ねてしまいましたが、聴くたび人の一生というものを考えさせられてしまいます。音楽には勝ち負けなどなく、結果的に後世の人々から評価されて、そして徐々に淘汰されていくものなのでしょう。

人生は長いようで短い。楽しいことばかりではなく、振り返れば苦しくてつらいことばかりが思い出されます。そんな時はいつもソウル・ミュージック。奇妙な作品である"Hear My Dear"は、私が最も愛聴する作品の一つですが、そこではMarvinが作り出す悲しいリフレインばかりを追い求めて聴いてしまいます。

話がクロスオーバー且つ脱線気味ですが、今日は大好きなMarvin Gayeを聴きながら過ごしています。

by olskooljam | 2019-03-21 22:51 | Book
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