LZ-A4

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ハイブリッド型と呼ばれるイヤホンやIEM。業界において一時的なブームもあったように思いますが、以前とは違い今では当たり前のように多種販売されています。とはいえ当然ですが、実際に聴いてみて自分の聴く音楽や音の好みに合うのかどうかを確認してみないことには、その本当の良さと魅力は分かりません。

写真は1年半前程前にリリースされたLZ社のA4というイヤホン。何度か試聴して気になっていたものの、実際に購入したのは今年に入ってからです。ドライバーは2BA+1DDというハイブリッド方式の定番的な3ピース構成。BAについてはknowles製が1、bellsing製が1という、別メーカー製のものを一基ずつ搭載し構成するというこだわりの仕上げ。バランスド・アーマチュアは製造メーカー自体が少ないのですが、私などは定番のknowlesという名前がそこにあるだけで何だか安心してしまいます。

このイヤホンの特徴として、ノズルと背面フィルターが共に交換できるというギミックがあるのですが、私は背面フィルターが黒、ノズルは赤という仕様で(今のところ)使用しています。デフォルトの組み合わせといえは黒・黒なのかもしれませんが、ノズルの赤については何というか抵抗的な効果があり、中高域がぐっと落ち着き、自然な深みと同時に奥の方でゆったり響くような効果が楽しめるようになります。一方でハイブリッド型特有の派手な鳴り方が抑えられますので、その辺りは本当に聴く音楽と好みの問題かとは思います。

mmcxケーブルについては、付属のものはやや高域がブライトに感じられるものの、癖が少なくとても優秀です。線質も柔らかく取り廻しについては特にバッチリです。ですが私はもう少し低域の量感が欲しかったことと、見た目についても本体とのイメージをしっかりと合わせたくなり、他社製の4芯編み込み式のものにリケーブルして使用しています。

ちなみにA4は通常の掛け方もシュア掛けのどちらも可能です。本体にそれなりの重量がありますので、私はシュア掛けで使っていますが、装着感についてはどちらも問題ありません。但し、柔らかいイヤーピースを使用する場合は、Shure掛けのほうが安定すると思います。

音質についてですが、実は最初聴いた時に、うわ、これはもしかしてやってしまったのか?と思うほど音が暴れて落ち着かず、こんなにドンシャリ気味だったかなと思いちょっと落ち込んでいました。視聴した時とあまりに印象が違ったのですが、BAはエージングが不要というのが定説ですのでもしかして不良品(当たった経験があります)ということまで考えたのですが、これについてはやはりエージングが解決してくれました。高域はぐっと落ち着き伸びやかに。低域についてはボワつくことなく自然に出てくるようになりましたので、どちらかといえばDD部分が原因だったのかなと思っています。

ハイブリッド型は本来全く違う特性を持つドライバーユニットを合わせる訳ですから、測定データを基にした厳密な調整が必要です。しかし最終的にはやはり経験豊かな人間により、チューニングの纏めをしなくてはなりません。このLZというメーカーには相当凄いノウハウを持つ人物がいるようで、出してくるイヤホン各々が個性的且つ極上の音質を誇っています。現在ではA5という型番のハイブリッドIEMが話題になっているようですが、そちらについても音質は文句ナシの仕上がりのようです。

A4の特徴はイヤホンではちょっと考えられない、まるで開放型ヘッドホンのようと例えられるような広大な音場が魅力の一つです。しかもただ広いだけでなく響きの調音が絶妙ですので、どのジャンルの音楽を聴いても違和感が少ないように思います。その為、その弊害としての音漏れが凄く、例えば電車内などでの使用には全然向いていないかと思います。

この開放的な音は一回体験すると結構な中毒性がありますので、他のイヤホンを使用して満足していても、ああA4で聴いてみたいなと思わせる魔力があります。実際に付け替えて聴いてみれば、ああやっぱりこのIEMは特別だなと感じさせるほど良く出来ており、そこにはハイブリッド型特有の(ユニットが上手く繋がらず分離しすぎてバラバラに響くような)違和感などはなく、チューニングの妙を感じます。

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Art Pepper - Modern Art (1957)

Pepper1957年録音の名盤。ブルージーでありながらも流暢な印象であるPepperのアルトが全開な作品ですが、A4に合いますね。MONO録音のシンプルな演奏であるゆえに、各楽器の音色やアドリブ、その独特の間を堪能できます。A4はDDが低域専用に搭載されていますので、量感タップリのベース音を拾い切ります。主役のPepperのアルトについては埋もれることなく、強弱を十二分に感じさせながら生き生きと描き出します。この辺りは管楽器が得意なBAを2個搭載している良い面が出ているようです。


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Force M.D.' s - for Lovers and Others : Greatest Hits (1992)

最近またまた復帰した80年代Sweet Soulの王様グループ。長らくシングル・オンリーであった名カヴァー"I Wanna Know Your Name"をバッチリ収録したベスト盤ですが、これを聴いてみました。ソウルはもちろん唄が主役ですので、そういう意味ではPinnacle P1のような(良く出来た)DD一発式のイヤホンのほうが相性は良いはずですが、A4も素晴らしいです。

80年代の音楽はどちらかというと奥行きに欠けている録音が多く、ドンシャリな印象があるのですが、全ての音を分離分析するかのようなハイブリッドのA4では、打ち込み主体のR&Bトラックであっても、一音一音がしっかりと考え尽くされた良録音であったことが分かります。トリスコの甘くかすれた唄声だけでなく、ここぞという時に前に出てくるドラムの音のキレがとても良いです。素晴らしい甘茶ソウル。


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Lord Finesse - Game Plan / Actual Facts (1996)

まだまだ元気なRoy Ayersのヴァイブが鳴り響く稀代の名曲。このシングルの目玉"Soul Plan Cruise Control Inst."では、Finesseお得意のクリスマス・ドラムに絡み合う鍵盤が立体的に耳の周りを旋回しますが、A4ではボトムスを支えるDDがかなり低い音までを拾いますので、Hip-Hopらしい重厚感についても存分に感じとれます。A4でこの辺りの音源を聴くと、もうヘッドフォンは不要かもとすら思わされるほど相性が抜群です。


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Horace Silver - Blowin' The Blues Away (1959)

ダイナミックに躍動するHard Bop名盤中の名盤。1959年録音とは思えぬ厚みがある音が記録されており、RVGの手腕が光る逸品です。A4で聴くSilverのピアノというかBlue Mitchellらの管楽器群は、とにかく素晴らしく伸びやかでエキサイティング。シングルBAやDD一発式で聴けば、何らかの楽器の音に必ず不満が出やすいというか、本来の音調と合わない部分が気になったりしますが、こういう鳴り物が多く音数も多くなるJazz録音では、ハイブリッド型がその本領を発揮します。

Louis Hayesによるブレイキーばりのド迫力ドラミングが楽しめるハードバップ"Break City"なども、まるで生演奏を聴いているかの如く再現します。こういう作品を聴くと、A4というかハイブリッド型のIEMは、開放的な特にライヴ録音等に向いているのかもしれません。素晴らしい再現性です。


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もうそろそろイヤホンの(空き箱の)置き場所自体がなくなってきているような状況なのですが、新しい音や好みの音に出会うとついつい購入してみたくなってしまいます。あのお気に入りのAlbumをこの機種で再生したら、果たしてどんな感じで聴こえてくるのだろうか。アーティストが作品に込めた情熱や、録音技師の手腕等がもっともっと伝わってくるのではないだろうか等と、妄想がだんだん激しくなってきて困ります。

しかしそれらもまた、音楽鑑賞の数ある楽しみ方の一つなのかもしれませんね。

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by olskooljam | 2018-04-30 11:55 | Audio
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