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EARNiNE EN120

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ポータブル・オーディオの世界は、相変わらず活況が続いているようですね。私も業界の動向というか、日々リリースされる新作群が、どうにもこうにも気になっている状況です。

そんな中で特に気になるのは、やはりイヤホンやIEM。よくこれだけアイデアが尽きないものだと感心するばかりですが、多様な作品が無尽蔵に出てくるような印象すらあります。

これは夏頃に入手したもので、個人的に増加していく一方のカナル型イヤホンの中でも、普段使いとしての使用頻度が高くなっている一つです。

ドライバーはシングルBA方式。インピーダンスは22Ωと低く、スマホでも充分出力を得られる仕様。ケーブルはツイストになっており、タッチノイズは気にならないレベル。但しケーブル自体はやや長いので、その辺りは使い方や好みに影響するのでしょうか。イヤーピースについては、私は英国Crystaline AudioのCrystal Tipsを合わせています。

音質はER-4S直系といいますか、シングルならではの解像度を誇る中高域と、意外にも粘る低域が同居。低音は60Hz前後までしか響いてはきませんが、それなりに量感もあり、シングルBAとしては充分。ポタアンを経由させて聴けば、音場が豊かに広がってゆき、これは実は相当に考えられた音作り(チューン)なのだと感じさせられます。

シングルBAについては、音の響きが特殊ですので、好き嫌いがはっきり分かれるような方式かと思います。マルチBAが全盛であっても、異彩を放つと言いますか、エティモやFinal社のように、この方式に徹底的なこだわりを持ち、多くの商品を作られているような会社もありますので、それだけに素人には分からない、大変に奥深い魅力がそこにあるのかと思います。実際に製品化されているシングルBAの商品群を見ても、形も音も特徴のあるものばかりです。私のようにヴォーカルを重視する人間にとっては、これは素晴らしく魅力的な音世界であり、シングルBAだけは、何個イヤホンを持っていても所有欲が湧いてきます。

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Dianaのオーケストラ仕様のAlbum。EN120ではヴォーカルは近くに寄り添い、吐息が感じられるよう。リメイクされた"The Boulevard Of Broken Dreams"では、ピアノや弦楽器がやや遠方に位置。スモーキーなDianaの唄声が刺さらず、意外にも柔らかな感触を持って、表現されてゆきます。

ゴージャス過ぎる仕上がりのこの作品では、私は普段ダイナミック型のAcoustune HS1004を選択しています。HS1004はちょっと異常なほどに音場が広く、また低域も雄大に奏でる強力なイヤホンですので、このような作品にはまさにピッタリです。BA式のEN120においては、主役の唄こそがメインだと言わんばかりに浮かび上がり、HS1004とはまるで違う世界が堪能できます。

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Milesのミュート・ペットが最高の作品。これもEN120にはよく合いますね。""Drad Dog"では背景がそれほどざわつかず、ブラシとピアノの間を、ペットやサックスが表情豊かに鳴り響きます。トランペットの音がひたすらに近く生々しい限り。重厚感のあるダイナミック式イヤホンで聴くのもまた格別ですが、精緻なBAにおいても活きてくる、実に素晴らしい音源。

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Joeの定番中の定番。EN120で聴く"The Love Scene"では、厚みのあるR&Bトラックのベードラが綺麗に分離。低音については当然少なくなりますが、弦楽器との混ざり具合などがよく聴こえ、やはりよく考えられてミックスされたものなのだと判ります。Joeのヴォーカルの特徴である艶や、ブレスの巧みさについても上手く表現されます。EN120の中高域には癖がなく、艶やかなるJoeの唄が堪能できます。


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高価なIEMはとても魅力的なのですが、取扱いにどうしても気を使ってしまいます。外出時に引っ掛けてしまったり、うっかりそのまま寝てしまい、故障させてしまうなんていうことがあれば、がっかりです。もう手放してしまいましたが、以前マルチBAのIEMを使用していた時などは、本当にいつも気苦労が絶えませんでした。

EN120のように扱いやすく、安価であっても音が良く、特徴のある商品が増えてくるのは、どこでも音楽ばかり聴いている人間にとっては、大変に喜ばしいことかと感じています。

by olskooljam | 2017-11-05 15:27 | Audio
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